家族信託と成年後見の違い


「認知症対策に家族信託を」って聞くけど、成年後見とどう違うのか、どこが良いのかわからない、と思っていらっしゃる方は多いと思います。

成年後見を使うと、「財産を柔軟に動かせなくなる。」というところまでは、テレビなどどこかで耳にはさんだことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

では、「柔軟に動かせなくなる」とは具体的にどういうことでしょう。
例えば、
・株式などの上場有価証券や、不動産投資等の積極的な資産運用をすることはできなくなる。
・新たに生命保険契約をすることはできなくなる。
つまり老後の生活資金の目減りを防ぐための積極的な資産運用や生命保険を使っての相続税対策などができなくなりますね。

・子、孫への贈与(お年玉、お小遣いも含む)ができなくなる。
・孫が大学に合格した、などの場合にお祝金をあげることもできなくなる。
生前贈与ができなくなるので、生前贈与を使った相続対策もできなくなります。

・自宅や所有している賃貸アパートを売却又は建て替えようと考えた場合、家庭裁判所の許可が必要になる。
合理的な理由がないと許可が出ません。とくに賃貸アパートの建て替えはハードルが高いでしょう。
自宅をバリアフリー住宅にリフォームする場合も大きなお金が動くことになるので許可が必要になります。

・自社株の議決権行使を経営専門外の成年後見人に任せることになる。
会社を経営していて自社株を持っている人は、議決権の行使を社外の、しかも会社を経営したこともない人に任せないといけなくなります。

といった感じです。

財産を柔軟に動かせなくするのは、「成年後見制度は本人の財産を減らさない。」ということを重要視しているからです。
その点、家族信託は信託契約書の内容にのっとって、本人(委託者)の財産を受託者(財産の管理・処分等を任された人)が管理・処分するので、契約内容によっては上記のことができますし、家庭裁判所の許可も必要ありません。

以上を見ると「成年後見は制限が多くて嫌だなあ。」と感じるかもしれませんね。

しかし、成年後見ではできて、家族信託ではできないこともあります。
例えば、老人ホームなどの施設との契約、介護保険契約、医療の契約など、身の回りの手続きや契約、つまり「身上監護」と呼ばれる機能は家族信託にはありません。
一人住まいをしているところに悪徳訪問販売員がやってきて、高級布団など買わされてしまった場合に、本人に代わって「取り消します。」と言うこともできません。
つまり、家族信託も万能と言うわけではないのです。

主な違いを表にまとめましたのでご覧ください。

  法定後見 任意後見 家族信託(民事信託)
財産管理者 家庭裁判所が選任した後見人 任意後見契約で定めた後見人 信託契約で定めた受託者
権限 ・財産管理
・法律行為の代理
(本人の行為の取消権有り
・財産管理
・法律行為の代理
(本人の行為の取消権は無し)
信託された財産の管理・処分
身上監護機能 有り 有り 無し
財産の積極的処分・運用の可否 積極的な運用や合理的理由のない処分は不可 積極的な運用や合理的理由のない処分は不可 信託目的(契約内容)の範囲内で自由な処分・運用が可能
財産の処分などについての家庭裁判所の許可 不要
財産管理者を監督する者 家庭裁判所
成年後見監督人
任意後見監督人(家庭裁判所が選任) 委託者(本人)
受益者(信託契約の利益を受ける人)
信託監督人(定めた場合)
信託代理人(定めた場合)
報告先 成年後見人が家庭裁判所・成年後見監督人に定期的に報告 任意後見人が任意後見監督人に定期的に報告 原則、年一回、受託者が財産状況開示資料を受益者に報告。
一定の場合には、毎年1月31日までに信託計算書を税務署に提出
報酬 家庭裁判所が決定。財産額等に応じて月額2~6万円+付加報酬が付く場合がある。 任意後見人の報酬は契約で決めておく+任意後見監督人報酬(月額は法定後見人の半額の1~3万円) 報酬をいくら支払うかは契約で決めておく。0円にすることも可能
本人が亡くなった時 後見終了。
本人の相続人らが遺言又は遺産分割協議により財産を取得。
後見終了。
本人の相続人らが遺言又は遺産分割協議により財産を取得。
信託契約内容によっては信託は終了しない。預貯金口座凍結の回避も可能。次の受益者や残余財産の帰属権利者が、受益権や残余財産を取得。