相続人代理人と相続財産管理人の違い

相続人の代理人になったり相続財産管理人に就任すると、相続人の代わりに預貯金口座の解約や支払いが済んでいない水道光熱費やら諸々の手続きをします。

弁護士が相続人の代理人又は相続財産管理人になると、弁護士の代わりに事務員が代わりに細かい手続をすることがほとんどです。

私が弁護士事務所でパラリーガル(事務員)として勤務していた際に気づいたのは、金融機関・役所の担当者でも「相続人代理人」と「相続財産管理人」の違いを知らない人が多い、ということです。担当者が違いを知らないばかりに、手続がスムーズにいかないことがしばしばありました。

「相続人代理人」は相続人の代理人です。相続人の委任を受けて、相続人がやるべき手続などをします。つまり、相続人が存在するわけです。代理人を証明する書類は相続人が作成した「委任状」です。

「相続財産管理人」は遺産を管理する業務をする人です。本来の相続人が全員相続放棄した、もしくは相続人に当たる人が誰もいない又は見つからない場合に家庭裁判所から選任された人です。つまり、相続人が存在しないのです。相続財産管理人がその身分を証明する書類は家庭裁判所が発行した「審判書」になります。

当時、金融機関・役所・その他電話会社などにおいてわからない担当者が出てきて手続が滞ることが多かったのは「相続財産管理人」のときでした。説明しているのにもかかわらず、どうも「相続人が存在しない」ということが理解できないらしく「相続人から連絡がほしい」「相続人でないと手続できません」の一点ばり。「手続書類は相続人に送ります」というところも。相続人の代理人であれば、「すいません、ここはどうしても相続人に手続してほしいと先方が言っているので。」と相続人に連絡してそこだけ手続してもらうことが可能ですが、相続人がいないのですから、代わりにお願いすることはできません。

「家庭裁判所の審判書が証明書類としてあります。」と言ってもダメ。私の説明が悪いのか?と思い先輩に相談したところ、「○○の窓口はいつも話が通じない」という結果。銀行などのコールセンターも結構苦戦しました。マニュアル外のことなのでたらいまわしになることが多かったです。困ったなあと思案した挙句、相続のことがわかる人がいそうな別部門に連絡したり、担当者を変えてもらったりしてようやく手続にこぎつけていました。

それと同時に当時気づいたのが、配偶者・子・兄弟姉妹がいなかったら従兄弟・従姉妹に相続権があると思っている人が一定数いるということでした。もしかすると「相続人がいない」が理解できなかった担当者は、いくらひとり者でも従兄弟・従姉妹はいるだろうと思っていたのかもしれませんね。でも残念ながら従兄弟・従姉妹には相続権がないので、代わりに手続をやってくださいと相続財産管理人が依頼することはできないのです。相続放棄の場合であっても本来相続するはずだった人たちに手続をお願いすることはできません。相続人のやることを一切合切やるのが相続財産管理人の任務ですので。

当時はまだまだ「無縁」が一般的に浸透していなかったせいもあるかもしれません。
近年は一生涯独身・兄弟姉妹にも子がいないという人が増えている・認知されてきたので、上記のようなトラブルは減っていくのではないかと思いますが、相続財産管理人が選任されるケースは今後ますます増えていくと予想しています。