相続財産管理人 – 相続人がいない場合の手続きの流れ

相続人がいない場合、相続財産管理人が選任されて、本来は相続人や家族がやる手続をしていきます。
相続財産管理人選任の申し立てをするのは、亡くなった人の債権者、相続人ではない親族(相続放棄をした親族も含む)、市区町村等自治体などになります。

手続の流れは下記のとおりです。

①相続財産管理人選任の申し立て
↓ 
②相続財産管理人選任の公告
↓ この間2カ月
③債権者及び受遺者の請求申し出の催告
↓ この間2カ月以上
④相続人捜索の公告
↓ この間6カ月以上
⑤相続人の不存在が確定
↓ 
⑥特別縁故者の相続財産分与の請求(⑤の確定後3ヶ月以内に。分与の請求は家庭裁判所に申し立て)

⑦特別縁故者へ分与財産の引き渡し

⑧残余財産は国庫に帰属

②、③、④の公告及び催告は官報に載せて広く知らせますが、一般の方はわざわざ官報を買わないので、知らないうちに手続が進んでいると感じるかと思います。(相続財産管理人選任の公告が官報に載ると、真っ先にFAXを送ったり電話をかけてくるのは古物の買い取り業者や不動産会社です。)
特別縁故者として財産を請求しようと考えている方は、今どのあたりまで手続が進んでいるか相続財産管理人に確認した方がよいかと思います。
ちなみに特別縁故者になってくるのは、生計を共にしていた法定相続人ではない親族や内縁の配偶者、その連れ子、頻繁に行き来していて亡くなった人の面倒を見ていた遠縁の親族、介護施設、菩提寺など様々です。
家庭裁判所は、請求する人が生前に亡くなった人に対してどれほど貢献していたのかを見て、分与財産を引き渡すのかどうか、渡すとしてどれほどの財産を分与するのかを決めます。

相続財産管理人は残された財産を処分してすべて現金化していきます。解約した預貯金や財産を処分して現金に換えたお金で、水道、電気、ガスなどを止め、残金を支払います。年金も含めありとあらゆる手続及び支払いをしていきます。ポストに入っていた郵便物、自宅内に残っていた書類などもくまなくチェックし、プラスの財産マイナスの財産両方を把握し、一つ一つ片づけていきます。

不動産もそのまま国庫に帰属させるのではなく、売却して現金化させてから国庫に帰属させます。
市場価値の高い不動産は、買い手がすぐにつくので売却手続きに手間はそれほどかからないのですが、過疎化が進んでいる地域だったり農地だったりすると買い手がなかなかつかないので、不動産屋さんに頼んでも買い手が見つからないことがよくあります。
そうなると相続財産管理人は、その土地に隣接している土地を持っている人に買ってもらえないか声を掛けていくことがあります。

このときに「土地を高く売れば売るほど相続財産管理人の報酬が上がるんでしょう?」とよく聞かれました。(このような質問は相続財産管理人である弁護士には直接聞きづらいので、事務員に聞いてくることがほとんどです。)
「土地を買ってくれとわざわざ言ってきているのだからもっと安くしてくれればいいのに、なぜ安く売ってくれないのか?」という疑問から出た言葉だと思います。
残念ながら高く売っても相続財産管理人の報酬が上がることはありません。相続財産管理人の報酬は裁判所が決めますが、高く売ったら仕事の評価も高くなるなどということはまったくないのです。

安く売れない理由の一つは、固定資産税評価額より安く売ることが難しいからです。
不動産の売却は、相続財産管理人一人の判断ではできません。売却にあたっては「この価格で売ってもよいですか?」と裁判所の判断も仰がないといけないのです。売却価格が適正かどうかの判断基準の一つが固定資産税評価額なので、これより安く売ることはなかなかOKしづらいところがあるのだと思います。
固定資産税評価額は、首都圏で売買が盛んな地域は時価(市場の価格)よりも低いことがほとんどですが、逆に郊外であまり買い手がいない地域だと時価より固定資産税評価額の方が高いという逆転現象が起きてしまうことがあります。そのような場合ですと、ぼったくられてるなと感じてしまうかもしれませんね。

安く売れないもう一つの理由は、亡くなった人の負債が多い場合です。相続放棄された結果、相続人が誰もいない、というケースによくあります。
相続財産管理人は亡くなった人の財産から、さまざまな処分費用や債権者への支払いをしなければならないので、万一不動産など売れる財産が残っていたならばできるだけ高く売って、支払いのための費用を捻出しなければなりません。そうなるとやはり安く売ることはできないわけです。

ただ、最終的には売らなければ相続財産管理人はいつまでも手続を完了させることはできませんし、市場価値があまりに低い場合には裁判所もそれを考慮せざるを得ませんので、このような不動産を買う場合にはやはり粘り強く交渉したほうがよいかと思います。