明治31年以降の法定相続人の範囲・相続分と適用期間

法定相続分は、相続人が配偶者と子であれば、配偶者は2分の1、子は2分の1。
いつ発生した相続であっても、相続人や法定相続分は一律に現行の法律どおり、と思い込んでいませんか?

実は、前の代、又は先々代からの相続手続を放置していて、数次相続(2回以上の相続)が発生している場合には、相続分が変わってくることがあります。
よくあるのは、何十年も前に発生した相続について長年不動産の相続登記を放置していて、数次相続が発生している、といったパターンですが、相続がいつの時代に発生したのかにより、この相続人の範囲・相続分が変わってくるのです。

 

相続人と相続分の変遷

相続人と相続分が、どのように変わってきたのかを表にまとめましたので、下記をご覧ください。

適用法令第1順位第2順位第3順位第4順位第5順位
明治31年7月16日

昭和22年5月2日
旧民法
(戸主が死亡、隠居等
した場合の家督相続
第1種法定
推定家督相続人
推定家督
相続人
第1種選定
家督相続人
第2種法定
推定家督相続人
第2種選定
家督相続人
旧民法
(戸主以外の家族が
死亡
した場合の
遺産相続
直系卑属配偶者直系尊属戸主
昭和22年5月3日

昭和22年12月31日
日本国憲法の
施行に伴う
民法の応急的
措置に関する
法律
配偶者
3分の1

3分の2
配偶者
2分の1
直系尊属
2分の1
配偶者
3分の2
兄弟姉妹
3分の1
昭和23年1月1日

昭和37年6月30日
改正前の
現行民法
配偶者
3分の1

3分の2
配偶者
2分の1
直系尊属
2分の1
配偶者
3分の2
兄弟姉妹
3分の1
昭和37年7月1日

昭和55年12月31日
改正前の
現行民法
配偶者
3分の1

3分の2
配偶者
2分の1
直系尊属
2分の1
配偶者
3分の2
兄弟姉妹
3分の1
昭和56年1月1日
~現在
現行民法配偶者
2分の1

2分の1
配偶者
3分の2
直系尊属
3分の1
配偶者
4分の3
兄弟姉妹
4分の1

※直系卑属:子や孫など
※直系尊属:祖父母、曾祖父母など
※第1種法定家督相続人:家族である直系卑属
※第2種法定家督相続人:家族である最も親等の近い直系尊属
※第1種選定家督相続人:家族である、①家女である配偶者、②兄弟、③姉妹、④家女でない配偶者、⑤兄弟姉妹の直系卑属の中から選定
※第2種選定家督相続人:親族、家族、分家の戸主又は本家もしくは分家の家族の中から選定

これを見ると何度も変わっていることがわかりますよね。
昭和55年12月31日までは、相続人が配偶者と子のみの場合でも、配偶者の相続分は3分の1だったことがわかるかと思います。

 

家督相続

昭和22年12月31日までは、被相続人が戸主であれば、「家督相続」、被相続人が戸主以外の家族であれば「遺産相続」と言っていました。

なんと、相続の原因が「死亡のみ」となったのも、昭和23年1月1日からなのです。
旧民法の時代には「家督相続(戸主の相続)」には生前の相続もありました。
「隠居」という言葉を聞いたことはありませんか?この「隠居」は、生前での相続の発生原因だったのです。
隠居以外に、国外に出てしまって日本国籍を喪失したり、婚姻や離縁により、その家を去ってしまうことなども相続の原因となっていました。

ほとんどの相続手続では、上記のような昔の民法の規定など考慮する必要はありません。
が、近年よく問題となっている所有者不明の土地は、相続登記が放置されていて、数次相続が発生、相続人がたくさんいる、という場合がほとんどです。
田舎の方に、一族の土地らしいが放置されている土地があるならば、相続登記がきちんとされているのか早目に調べておくのがよいかと思います。
万一、相続手続がされずに長年放置されていた不動産が見つかり、自分も相続人の一人であるとわかった場合などには、相続人の範囲や相続分が現行の法律とは違う、ということを念頭に置いて手続に取り掛かりましょう。
なお、このような場合には、相続人を探すのも、話をまとめるのも通常の相続より大変になってきますので、自分では対処できないと思ったら、早めにお近くの専門家に相談してくださいね。

 

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