相続放棄、廃除、相続欠格。
この三つの共通点は、いずれも相続人から外れてしまうことです。
では、相続人から外れると、どんな影響が出てくるでしょうか?
相続人から外れた人の子や孫は、代襲相続人として遺産を受取れるのか?
相続税の600万円の基礎控除の人数に入れることはできるのか?
どうなってくるのか、違いを見てみましょう。
相続放棄
家庭裁判所に相続放棄の申立てをすると、その相続人は、相続開始時から相続人でなかったことになります。
相続放棄をした人に子がいた場合、その子は代襲相続人として、遺産を受取ることはできません。
ところが、別途遺言で、贈与された遺産がある場合には、相続放棄をしていても、その贈与された物については受取ることは可能です。
相続税の基礎控除は、3000万円+600万円×相続人の人数で計算しますね。
相続放棄をしたとしても、この600万円×相続人の人数に入れることができます。
生命保険の死亡保険金についても、相続人一人あたり500万円の相続税の非課税枠がありますが、この非課税枠の相続人の人数に入れることもできます。
廃除
被相続人は、自分を虐待する、酷い侮辱をした、などの著しい非行行為をした相続人を遺言により「廃除」することができます。
手続としては自分の死後に、遺言執行者が家庭裁判所に請求して、遺言で廃除するとしたその相続人を廃除してもらいます。
ちなみに、親子の仲が不仲だった、という程度では、家庭裁判所は廃除は認めてくれません。
「さんざん虐待されて酷い目にあった」という場合でも、確実に廃除して欲しいと願うのであれば、単に遺言で書いておくだけでなく、虐待された証拠をきちんと取って置き、遺言執行者となる人に証拠も渡しておかないと、裁判所で廃除を認めてもらうのはなかなか難しいでしょう。
廃除は、遺言だけでなく、自分が生きている間に家庭裁判所に申し立てて、予め廃除してしまうこともできます。
が、虐待されているとなると、生前に裁判で申し立てるのは、虐待相手を前にしては、なかなか厳しいものがあるため、遺言で廃除することの方が多いようです。
廃除されると、なんと!戸籍の身分事項に廃除されたことが記載されます。
ちょっとこれはびっくりですね。
廃除された場合には、廃除された人の子は、代襲相続人として、遺産を受取ることは可能です。
子は、廃除された本人ではないですからね。
変な感じがするかもしれませんが、遺言で遺贈された物があった場合には、廃除された人は、この遺贈を受け取れます。
と、いう事は、遺贈する遺言を書いてしまった後で、「酷い虐待をされた、あいつには何もあげたくない!」という場合は、速やかに遺言も書き換えておかないといけませんね。
相続税の600万円の基礎控除、生命保険金の500万円の控除については、廃除された本人は、相続人の人数に入れられません。
代わりに代襲相続人がいれば、その人は相続人の人数に入れることができます。
欠格
被相続人を殺害した、騙したり、脅すなどして無理やり遺言を書かせた、など、一定の行為をした相続人は「相続欠格」となり、当然に相続権を失います。
当然に相続権を失うのですが、廃除と違い、戸籍に欠格していることは記載されません。
廃除よりも欠格の方が重大な気がしますけれども、この場合には戸籍に載らないのです。
戸籍に載らず、外形的に第三者には欠格していることがわからないため、実際には、相続人の地位不存在確認の訴えにより、相続権の喪失を確定する必要があります。
この訴えは、相続人全員が参加して、しなければなりません。
もしくは、相続欠格者本人に、「相続欠格に該当することを証明する書面(印鑑証明書を添付して)」を作成してもらわなければなりません。
欠格となってしまった人の子は、代襲相続人になります。
つまり、欠格となった本人は遺産を受取ることができませんが、子は遺産を受取ることは可能です。
相続放棄や廃除と違って、遺言で遺贈された物があったとしても、それを受取ることはできません。
相続税の600万円の基礎控除、生命保険金の500万円の控除については、欠格者本人は、相続人の人数に入れられません。
代わりに代襲相続人がいれば、その人は相続人の人数に入れることができます。
まとめ
さて、最後に違いを表にまとめましたので、ご覧いただければと思います。
相続放棄 | 廃除 | 欠格 | |
代襲相続 | できない | できる | できる |
遺贈 | 受け取れる | 受け取れる | 受け取れない |
戸籍に記載 | 記載なし | 身分事項に記載される | 身分事項に記載されない |
相続税の基礎控除 | 人数に入れる | 代襲相続人がいる場合の代襲相続人分 は入れるが、いない場合、本人分は 人数にいれない | 代襲相続人がいる場合の代襲相続人分 は入れるが、いない場合、本人分は 人数に入れない |
生命保険の非課税枠 (相続税) | 人数に入れる | 代襲相続人がいる場合の代襲相続人分 は入れるが、いない場合、本人分は 人数に入れない | 代襲相続人がいる場合の代襲相続人分 は入れるが、いない場合、本人分は 人数に入れない |
いかがだったでしょうか?
相続人の中に廃除される人や欠格者が出ることは稀かと思いますが、万一出てしまった場合には、このようになるということを知っておいていただければと思います。