遺産分割をするのに不動産の価値はどう評価する?

「遺産分割で姉妹二人できっちり2分の1ずつ分けることになったのはいいとして。親の自宅を姉がもらうと言っているけれど、そうすると妹の私はお金でいくらもらえるのかしら?」
実家を売却して、売却代金を分ける、というのであれば金額がはっきりしていまね。
しかし、売却しないで相続人のうちの一人が相続するとなると、一体全体自宅の価値をどう評価したらいいのか?
遺産分割では、この点がよく問題になります。
そこで、今回は、不動産の評価額について説明したいと思います。

不動産(土地)は一物四価

不動産(土地)の価値は、よく「一物四価」と言われます。
「四価」というのは、一つの土地に四つの価格が付いているからです。
四つの価格というのは、時価(実勢価格)、公示価格、路線価、固定資産税評価額、の四つです。
基準地価(都道府県基準地標準価格:国土利用計画法に基づいて、都道府県知事が毎年公表する価格)も入れて一物五価、と言うこともあります。

まず、この四つの価格について説明したいと思います。

時価(実勢価格)

時価とは、実際に取引される売買価格です。
売買価格ですから、実際に売ってみないことには、いくらで売買が成立するのか正確な価格はわかりません。
したがって、「売らない」という前提だと、実際、自分たちの自宅はいくらなのか算定ができませんね。
ただし、不動産屋さんの広告を多数見て、近隣の同じくらいの広さや条件の不動産がいくらで売り出されているかを参考にすることはできるでしょう。
また、いくらかお金を払って、何件かの不動産屋さんに査定を出してもらうか、高額になりますが不動産鑑定士に鑑定してもらうことは、やろうと思えばできます。

公示価格

公示価格は、地価公示法に基づいて、全国に定められた標準地を対象に国土交通省が毎年1月1日に公示する価格です。
公示価格は、国土交通省の土地総合情報システムを使って調べることが可能です。
調べたい土地に一番近い標準地を調べれば、おおよその価格がわかります。

路線価

路線価は、国税庁が毎年発表する、市街地などにおいて公衆が使用する道路(路線)に付けられた価格です。
路線価図に示されている価格は、宅地1㎡あたりの評価額です。
路線価は、公示価格の8割程度となっています。
路線価図は、国税庁の財産評価基準書のサイトから調べることができます。
調べたい土地の前を走っている道路に付けられた路線価に、土地の面積を掛けて土地全体の評価額を出します。

田や畑、山林など、路線価が定められていない地域は、倍率表で確認します。
倍率表も同じく国税庁の財産評価基準書のサイトから調べることができます。
路線価が定められていない地域は、固定資産税評価額に、倍率表に書かれた倍率を掛けて評価額を出します。

相続税の申告にあたっては、この路線価又は倍率表を使って土地の評価額を出します。
建物については路線価などはありませんから、固定資産税評価額が評価額となります。

固定資産税評価額

固定資産税評価額は、市町村が固定資産税を課税する際の基準となる評価額です。
固定資産税評価額は、公示価格の7割程度となっています。
毎年届く、固定資産の納税通知書に載っています。
納税通知書が見当たらない場合は、市町村役場の税務課または都税事務所などで評価証明書を取得しましょう。

さて、遺産分割にあたっては、上記4つのうち、どれを使って評価をすればよいのでしょうか?
基本的には、「時価」で評価をします。
しかしながら、自宅を売らないのであれば、実際に時価がいくらなのかはわかりませんね。

ちなみに、建物については公示価格や路線価、といったものはありませんから、時価か固定資産税評価額しかありません。

実を言うと、遺産分割にあたっては「必ず時価で計算しなければならない」とは、法律で決められてはいません。
ですので、どの評価方法を使うか、相続人間の話合いで決めることができます。

都市部であれば、時価の方が固定資産税評価額や路線価より高いのが普通です。
しかしながら、かなり人口が少なくなっている地域などでは、土地に路線価や固定資産税評価額が付いていても、時価は0円であることもあります。
固定資産税がかかっていても、あまりに古すぎてタダでも買い手のつかない建物であることもあります。
売ったとしたら買ってくれる人はいないけど、自分たちで使うことは十分できるものを時価のゼロ円で評価するのも変な感じがしますよね。
なので実情に応じて、相続人の間の話合いで評価方法を決めることができるのです。

そうは言っても、どうしている家族が多いのか気になるところですよね。
実際のところは、一番簡単に入手できる書類で額を確認できるため、固定資産税評価額や相続税申告上の評価を前提に分ける家族が多いようです。

いつの時点での評価額を使うか?

さて、評価方法は決まったとして、今度はいつの時点の評価額を使うのか?という問題が不動産にはあります。
現金と違い、不動産には相場があるので、価額は一年の間でも変動するからです。

また、被相続人が亡くなってから、遺産分割で話合いをするまでに何年もかかってしまうこともあります。
当然、相続時と遺産分割時とでは、場合によってはわずかかもしれませんが価格は変動しています。
そうなると、いつの時点での評価額を使えばよいのでしょうか?

相続税を申告する場合は、「相続開始時」と法律で明確に決められていますが、遺産分割については決められていません。
そのため、遺産分割における遺産の評価時期については、相続時(被相続人が亡くなった時)とするべきであるという説と、遺産分割をした時とするべきであるという説と二つあります。
実務(特に遺産分割を裁判所で話し合うことになった場合)では「遺産分割時」で運用されています。
遺産分割をせずに何年も、時には数十年も不動産を放置しているケースを考えていただくとわかりやすいかな、と思いますが、このような場合、建物は既にボロボロ、土地そのものも荒れ放題になっており、遺産分割の話合いをした時の評価額で話し合う方が、お互いに納得できますよね。

ただし、実務では遺産分割時で運用されているからと言って、必ずしもこれに従う必要はありません。
どの評価額を使うかだけでなく、評価時期をいつにするのかも相続人間で話合いで決めることができます。
合意さえできれば相続時でも遺産分割時でも、どちらでもかまわないのです。

以上、今回は遺産分割における不動産の評価についてお伝えしました。
いろいろ説明をしましたが、不動産の遺産分割で大切なのは、結局のところ評価方法、評価時期をどうするかよりも、相続人が納得して合意できるか、にかかっています。
少しでも自分に有利な価格で分けたい、と考えるのは普通のことですが、お互いに譲歩しないと話合いはいつまで経ってもまとまりません。
心情的に難しい事情がある場合もあるかもしれませんが、相手のことも少しは考えて、遺産分割協議に臨んでいただければなと思います。

関連記事

  1. 相続財産の特定 — 相続財産になるもの、ならないもの

  2. 相続税・準確定申告の期限、申告が必要な場合とは

  3. 法定相続情報一覧図とは?

  4. 遺産分割協議書作成のポイント

  5. プラスの相続財産から債務控除できるもの

  6. 預貯金の仮払い制度 ― その内容と注意点