亡くなった人が持っていた株式が株式市場に上場されている上場株式であれば、相続税の申告に必要だからとお願いすると取引先の証券会社の方で、評価に必要な資料を出しくれます。
では、遺産の中にあった株式が、取引相場のない株式(いわゆる自社株)であった場合には、どう評価額を出せばよいのでしょうか?
今回は、この自社株の評価についてお伝えしたいと思います。
評価方法は4つ
取引相場のない株式の評価方法は、まず大きく、「原則的評価方法」と「特例的評価方法」の2つに分かれます。
原則的評価方法には、「類似業種批准方式」「純資産価格方式」「併用方式」があります。
特例的評価方法には、「配当還元方式」があります。
原則的評価方法と特例的評価方法とあわせて、①類似業種批准方式、②純資産価格方式、③併用方式、④配当還元方式、の4つの評価方法がある、というわけです。
次に、それぞれの評価方法について説明します。
類似業種批准方式
類似業種批准方式とは、上場している類似業種企業の株価をもとにして、配当、利益、簿価純資産の3つの要素を加味して評価額を算定する方法です。
計算式は下記になります。
各アルファベットに入れるものは次のとおりです。
A: 類似業種の株価
B: 類似業種1株あたりの配当金額
C: 類似業種1株あたりの利益金額
D: 類似業種1株あたりの純資産価格
b: 評価会社の1株あたりの配当金額
c: 評価会社の1株あたりの利益金額
d: 評価会社の1株あたりの純資産価格
また「斟酌率」は、大会社0.7、中会社は0.6、小会社は0.5を入れて計算します。
純資産価格方式
純資産価格方式とは、その会社の純資産価格を相続税評価額(時価)で評価して、それぞれの発行済み株式数で割って、1株あたりの評価額を算定する方法です。
計算式は下記になります。
ちなみに数式の中の「37%」は、法人税の実効税率です。
併用方式
併用方式は、類似業種批准方式と純資産価格方式の併用です。
配当還元方式
配当還元方式は、その会社の直前2期間の配当金額をもとに評価額を算定する方法です。
計算式は下記になります。
では、どの評価方法を使うの?
ここまでで4つの評価方法があるということと各計算式については、とりあえずお分かりいただけたかと思います。
今度は「自分の場合はどの評価方法を使うのか?」という疑問が出てきますよね。
株式の評価が一番低くなりそうな評価方法を好きに選ぶ、ということは当然できません。
どの評価方法で算定するかは、会社の規模や誰がその株式を取得したのかによって異なります。
まず、株式を取得したのが「誰なのか」で2つに分かれます。
① 同族株主等のうち一定の者
② 同族株主以外の株主等
ここで「同族株主」という耳慣れない言葉が出てきましたね。
同族株主とは、株主の1人またはその同族関係者で、その会社の議決権の30%以上を有している場合の株主グループのことを言います。
ただし、株主の1人及びその同族関係者グループで、その会社の議決権の50%超を有している場合には、その株式グループのみを言います。
説明を続けます。
①同族株主等のうち一定の者
株式を取得したのが、同族株主等のうち一定の者である場合には、会社の規模で原則的な評価方法が決まります。
会社の規模 | 原則的な評価方法 |
大会社 | 類似業種批准方式(または純資産価格方式) |
中会社 | 併用方式(または純資産価格方式) |
小会社 | 純資産価格方式(または併用方式) |
②同族株主等以外の株主等
同族株主等以外の株主等の原則的な評価方法は、配当還元方式となります。
以上、自社株の評価額の出し方について、ざっと一通り説明しましたがいかがでしょうか?
個人で評価額を計算するのは、ちょっと難しいなと思われたのではないでしょうか?
会社の規模も、自分の所は大会社なのか、中会社なのか、小会社なのか、ぱっと判定できませんよね。
遺産の中に、自社株があった場合には、税理士にきちんと評価額を計算していただいくことをお勧めします。