後見人ができること・できないこと

後見人になったら、具体的にどのような仕事をするのでしょうか。
一方、後見人になったからと言って、すべてのことが本人に代わってできるわけではありません。
今回は、後見人ができることと、その内容、及び、後見人となってもできないことについて、ざっと説明したいと思います。

まず、後見人の仕事は、大きく「財産管理」と「身上監護」の二つに分けられます。
これらは両方とも「法律行為」に属するものです。

財産管理

財産管理とは、本人(被後見人)の財産を維持・管理することです。
具体的には、以下のような仕事をします。
・預貯金、現金の管理
例えば、定期預金の解約や、振込などの銀行の手続、公共料金の支払い、その他収入・支出の管理など。

・不動産の管理、処分
老人ホームに入るために自宅の売却処分を行う、暮らしやすいよう自宅をバリアフリーにするため大規模なリフォームすることなど。

・賃貸借契約の締結や解除
持ち家でなく、家を借りていた場合の契約の締結や解除、もしくは、本人が貸している不動産があった場合の契約行為ですね。

・遺産分割
本人の親族に相続が発生したときに、本人の代わりに遺産分割協議に参加します。

・自動車の管理、処分
もう使用しない、ということであれば売却処分を検討したりします。

身上監護

身上監護とは、本人(被後見人)の意思を尊重し、かつ本人の心身の状況や生活状況に配慮しながら、適切な環境で、適切な医療や介護を受けることができるように配慮し、またそのための手配をすることです。
具体的には、以下のような仕事をします。
・医療に関する契約の締結
たとえば、病院での治療および入院手続の支援です。
・介護に関する契約の締結
・要介護、要支援認定の申請
・住居の確保に関する契約の締結
・老人ホームなどの施設への入所・退所に関する契約の締結
・リハビリに関する契約の締結
・見守り行為

以上の他、財産管理、身上監護に関連する管理行為として、郵便物の管理、運転免許証・マイナンバーカードや健康保険証などの各種保険証、障害者手帳、年金手帳といった重要な書類も管理します。

後見人ができないこと

後見人は、上記に挙げた「法律行為」のみをすることができます。
しかしながら、「事実行為」や「身分行為」はすることができません

事実行為とは、本人の生活や健康管理のために何らかの労務を直接提供する行為です。
例をあげますと、
・施設から病院までの送迎
・生活用品の買物
・掃除、洗濯、庭の草むしり
・本人の介護
・入浴の介助
・本人のために食事を作る
といった行為です。
これらの支援を必要としている場合には、後見人が直接労務を提供するのではなく、介護タクシーを呼ぶ、ホームヘルパー契約をする、など本人が必要なサービスを受けられるよう、後見人が手配をします。

身分行為とは、法律上の身分関係に関する法律効果を発生させ、あるいは変更、消滅させる行為です。
例えば、

・養子縁組をする
・婚姻届を出す
・離婚届を出す
・子の認知をする
といった行為です。

身分行為は、そもそも代理人が本人に代わってすることはできません。
なぜなら、身分にかかわる行為は、本人の意思がもっとも尊重されるべき行為であり、このような行為について本人以外の人が代理をしたり、同意をしたりすることは性質上なじまないからです。
したがって、後見人も本人に代わって上記のような身分行為をすることはできません。
ちなみに、後見人が本人の代わりに遺言を書いたりすることもできません。

以上のほか、後見人は、本人の病院入院時や施設入所時の保証人になることもできません。
成年後見人は、本人と同一の立場の物であり、自分で自分の保証をすることは不可能だからです。
もちろん、本人の債務の保証人になることもできません。

また、医療行為において治療、及び入院手続の支援はできるのですが、身体の苦痛や危険を伴うことのある具体的な医療行為(例えば手術など)の同意はできません。
事前(例えば認知症になる前)に本人の意思の表明が無いまま、本人が意思表示することができない状態になった時は、延命治療の拒否・中止を後見人が代わりに表明することもできません。
もちろん、臓器移植における臓器提供の意思表示についても同様です。
ただし、健康診断や検査など軽微な医療行為については、後見人にも同意権があると考えられています。

以上、今回は、後見人のできる仕事・できない仕事についてお伝えしました。
後見人ができる仕事についても、後見人は、あくまで「本人のために」仕事をする立場です。
本人に判断能力がなく、意思を確認することが難しい場合であっても、可能な限り本人の希望をくみ取って仕事を遂行しましょう。

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