公正証書遺言を作成しようと考えた時、かかる費用がどれほどになるのか、気になりますよね。
そこで今回は、公正証書遺言を作成する場合に係る費用について説明したいと思います。
公証役場に支払う費用
ざっくり言うと、公証役場に支払う基本的な費用は、基本手数料+遺言加算+用紙代です。
公証人に出張してもらった場合には、基本手数料が1.5倍になり、日当や旅費交通費(実費)が加算されます。
以下、詳しく説明していきたいとおもいます。
基本手数料
まず、公証役場に支払う契約や法律行為にかかる証書の作成の基本手数料は、原則としてその目的価格により定められています。
遺言公正証書の場合は、遺言で相続させる、又は遺贈する財産の価格を目的価格として計算します。
目的価格による基本手数料は、下記のとおりです。
目的の価格 | 手数料 |
100万円以下 | 5000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
200万円を超え500万円以下 | 1万1000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 1万7000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 2万3000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 2万9000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 4万3000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額 |
さて、相続させ・遺贈する財産の価格で、基本手数料が決まるのですが、この基本手数料は「法律行為1つにつき目的価格を計算する」と考えるところに注意が必要です。
遺言は、相続人・受遺者ごとに別個の法律行為となります。
遺言書を作成するのは1通であっても、複数の相続人・受遺者に相続・遺贈する場合には、「複数の法律行為をする」、と考えます。
つまり、どういうことかというと「遺言に記載した財産の総額で基本手数料を計算するのではない」、ということです。
各相続人・各受遺者ごとに相続させ・遺贈する財産の目的価格を算出して、それぞれの手数料を計算し、その合計額が基本手数料の額となります。
ここで、相続させ・遺贈する目的財産の総額が6000万円、これを相続人3人に2000万円ずつ相続させる遺言を作成する場合を、試しに計算してみたいと思います。
総額6000万円の遺産だから、上記表の5000万円を超え1億円以下の基本手数料4万3000円と考えるのは「間違い」です。
まず、相続人1人の目的価格は2000万円なので、1人の基本手数料は2万3000円です。
2000万円ずつ3人に相続させるので、2万3000円×3人=6万9000円
つまり、この場合の基本手数料は6万9000円になります。
遺言加算
公証役場で遺言を作成する場合には、基本手数料の他、遺言加算と言う特別の手数料がかかります。
これは、1通における遺言公正証書の目的価格の合計額が1億円以下の場合には、1万1000円が加算される、というものです。
したがって、先ほど例として挙げた目的財産価格6000万円を相続人3人に2000万円ずつ相続させる遺言の場合、目的価格が1億円以下なので、基本手数料6万9000円に1万1000円が加算されて、合計手数料は8万円、となります。
用紙代
用紙代は1枚250円(4枚までは2000円)かかります。
つまり、ページ数が増えるとそれだけ用紙代が増えます。
公正証書遺言は、原本・正本・謄本の3通を作成しますので、1ページ増えるごとに750円追加になります。
文章が長い遺言を書くか、短い遺言を書くかでも手数料が変わってくる、というわけです。
祭祀主宰者を指定する場合
遺言書の中で、祭祀主宰者を指定した場合には、手数料が追加されます。
祭祀主宰者の指定は、相続・遺贈とは別個の法律行為であるとされているからです。
しかしながら目的価格が算定できないため、この手数料は1万1000円とされています。
公証人に出張してもらった場合
公証人に出張してもらって遺言書を作成した場合、遺言加算を除いた目的価格による手数料額の1.5倍が基本手数料となります。
このほか、旅費交通費と日当がかかります。
旅費交通費は、実際にかかった交通費が請求されます。
公証人の秘書(公証役場の事務員)もついてきた場合、秘書の交通費も請求されます。
日当は1日2万円、ただし4時間までは1万円です。
つまり、公証人に出張してもらって遺言書を作成した場合には、基本手数料×1.5+遺言加算+用紙代+日当+旅費交通費が請求されます。
遺言の作成を依頼した後、途中でキャンセルした場合
公正証書遺言の作成を依頼して、文案の作成途中などでキャンセルとなった場合には、キャンセル料が請求されます。
その他
公証役場に支払う手数料の他にもかかる費用があります。
証明書の発行手数料
公正証書遺言の作成を依頼するには資料を公証役場に提出しなければなりません。
たとえば、
・遺言する本人の印鑑登録証明書
・遺言者と相続人の関係がわかる戸籍謄本
・受遺者(相続人以外で財産を貰う人)の住民票
・不動産の登記簿謄本
などです。
これらの書類の発行手数料が、かかってきます。
専門家に対する相談・文案作成手数料
公正証書遺言作成にあたり、行政書士・司法書士・弁護士などの専門家に相談、文案作成を頼んだ場合には、その専門家に払う費用も発生します。
公証人は遺言だけを作成しているわけではありません。
会社の定款認証、私署証書の認証など、様々な業務をやっています。
遺言作成の相談は公証役場でもできますが、ほとんどの公証人は忙しい、というのが現状です。
いろんな角度から検討してアドバイスをもらいながらじっくり考えて遺言書を作成したい、遺言のことがよくわからないので一から手取り足取り教えて欲しい、と言う場合には、公証役場に行く前に、やはり専門家に相談する方が適切でしょう。
また、公証役場は土日祝日は開いていません。
土日祝日に相談したい、家に来てもらって相談したい、と言う要望には公証役場は応えてくれません。
ですので、このような要望がある人も、専門家に文案作成等を依頼した方がよいでしょう。
証人に払う費用
公正証書遺言を作成するには、2人の証人が必要です。
証人は、遺言者にとって利害関係がある人はなれません。
つまり相続人や受遺者になるような近しい関係の人はなることができません。
友人・知人に証人になってくれる適当な人がいない場合には、遺言の相談をした専門家又は公証役場で証人となってくれる人を探してくれるよう頼む必要があります。
つまり証人を依頼した場合には、その証人に対する費用が発生します。
まとめ
以上をまとめると、
・公証役場に払う費用は、基本手数料×1.5+遺言加算+用紙代
・公証人に出張してもらった場合には、基本手数料×1.5+遺言加算+用紙代+日当+旅費交通費
そして、
・公証役場に提出する印鑑登録証明書などの必要資料の発行手数料
このほか、人によっては、
・専門家に対する相談料
・証人の費用
がかかる、ということになります。
以上今回は、公正証書遺言作成に係る費用について説明しました。
費用がかかるなあ、という印象を持たれた方もいるかもしれませんが、確実性・信頼性の高い遺言書を作成できることを思えば決して高くはありません。
また公正証書遺言の場合、遺言者が手書きをする必要があるのは、署名部分だけです。
本文を自分ですべて手書きで書かなければならない自筆証書遺言と違い、各段に楽でもあります。
遺言書の原本の保管は無料で、公証役場で保管してくれますし、紛失の恐れもありません。
自分の意思を死後に確実に実現したい場合には、是非、公正証書遺言を検討してみてくださいね。