公正証書遺言作成日当日の公証役場での手続の流れは?

「公証役場で作成日の予約が取れたけれど、当日はどんな風に進むのだろう?」
公証役場には生まれて初めて行く、と言う方は多いですから、気になりますよね。
そこで今回は、公正証書遺言の作成日当日の手続の流れについて説明します。

ざっとした当日の流れは、次のとおりです。
①遺言者の本人確認
②証人の本人確認
③遺言の内容を質問
④遺言書の読み合わせ
⑤各自署名・押印
⑥公証人が署名・押印
⑦正本・謄本の交付
⑧手数料を支払う

もう少し詳しく説明していきたいと思います。

遺言者の本人確認

公証役場内の遺言作成のブースに入れるのは、公証人、遺言者、証人2人の4名だけです。
遺言の作成に入る前に、遺言者本人の付添いで来た人は、別なところで待たされます。

まず、公証人が最初にやることは、公証役場に来た人が本当に遺言者本人であるかの確認です。
遺言者は、運転免許証、マイナンバーカード、健康保険証など、本人であることを証明できるものを公証人に提示します。
公証人は、遺言者に氏名・生年月日・住所・職業を質問します。

本人確認書類で遺言者本人であることが確認できたら、公証人は、本人確認書類のコピーを取ります。

併せて、印鑑登録証明書と同じ印鑑(実印)を、遺言者が持ってきているかどうかも公証人が確認します。
別な紙に試しで印鑑を押させ、印鑑登録証明書と印影が一致しているか確認します。
証人2人にも印影が一致しているかを確認させます。

証人の本人確認

証人についても同様に、公証人は証人が本人であることが間違いないか、本人確認書類をもって確認します。
また、公証人は、証人2人に氏名・生年月日・住所・職業を質問します。

遺言の内容を質問

公証人は、これまでの打ち合わせで作成した遺言書を既に用意しています。
このあと遺言書の読み合わせをするのですが、その前に、公証人は、口頭で、どのような内容の遺言にしたのかを遺言者に尋ねます。
誰に何をあげるのか、遺言執行者は誰にするのか、など、遺言書を見ない状態で尋ねられます。

これは何をしているのかというと、遺言者が遺言をする能力があるのか、また本当に自分の意思でそのような内容の遺言を残す気持ちがあるのか、の確認をしているのです。
質問されて緊張する方が多いですが、落ち着いて答えましょう。

ここで、遺言能力が無い、または、本人の意思でこのような内容の遺言を残すのではない、と公証人に判断されると、遺言の作成は中止となります。

遺言書の読み合わせ

遺言者の遺言能力の有無及び意思の確認が取れると、いよいよ遺言書の読み合わせに入ります。
遺言書は、原本、正本、謄本の3通が用意されています。
たいてい、正本が遺言者本人、謄本が証人二人に手渡され、原本は公証人が手元に持って読み合わせします。

公証人が原本の遺言内容を読み上げ、遺言者と証人二人は、遺言の内容に相違がないかを手元の正本・謄本を黙読しながら確認します。

各自署名・押印

原本、正本、謄本の遺言内容に相違がないか、確認がとれたら、各自署名・押印をします。
署名・押印をするのは、原本のみです。
正本・謄本には、氏名については印刷、印鑑は「㊞」と印刷されていますが、どちらも相続手続時には原本と同じ効力を持ちます。
署名する順番は、①遺言者本人、②証人二人、の順です。
署名する場所は、公証人が教えてくれますので、指示された場所に署名しましょう。

三人の署名が終わると、各自、自分の署名の後ろに押印をします。
遺言者は実印、証人は実印又は認印で押印します。
印鑑は、署名にかからないように押します。

公証人が署名・押印

3人の署名・押印が終わると、公証人も署名・押印をします。
ここで、公証役場の事務員に、3通の遺言書が手渡されます。
遺言書はそれぞれホチキス止めされ、「公証」のパンチ印(穴)が打たれます。

正本・謄本の交付

署名・押印した遺言書の原本は、公証役場で保管されます。
保管手数料は無料です。
公証役場での原本の保存期間は原則として20年、とされています。
しかし、遺言や任意後見契約など、保存期間の満了した後も保存の必要があるものについては、その事由のある期間保存しなければならないとされています。
したがって、遺言者本人が亡くなるまで、遺言書の原本は厳重に保管されます。

一方、正本・謄本は遺言者本人に手渡されます。
正本・謄本は、遺言者が持ち帰ることができるのです。
手渡す際に、公証人が説明してくれますが、正本も謄本もどちらも相続手続に使えます。

後に、正本・謄本を紛失してしまった場合には、手数料を払えば、謄本の再発行を公証役場にお願いすることができます。

手数料を支払う

最後に、公証人から遺言書作成手数料の請求書が手渡されます。
遺言者はその場で、公証人に手数料を現金で支払います。
カード払いはできませんので、お気をつけください。

手数料を支払うと、領収証を渡してもらえます。

これですべて完了です。
遺言者の確認から手数料の支払いまで、ほとんどの方は30分ほどで終わります。

公正証書遺言の正本・謄本はどのように保管する?

さて、公証役場から帰ってきました。
「公正証書遺言の正本・謄本の保管をどうしようか?」
と考えると思います。

「大切なものだから失くしてはいけない」
そう考えて、銀行の貸金庫に保管する方がいますが、貸金庫に保管するのは絶対にやめてください。

あなたの死後、貸金庫を開けるのに、銀行から相続人全員の署名・押印を要求されるおそれがあるからです。
相続人の全員が、署名押印に速やかに応じてくれれば、中には応じてくれない、認知症や行方不明などで署名・押印をもらうのが難しい人が出てくる可能性もあります。
遺言書が取り出せないと、内容も確認できませし、手続も開始できませんよね。

相続手続をスムーズに進めるために遺言書を作成したはずが、結局、手続の手間が増えることになってしまいます。
ですので、貸金庫以外の場所に保管しましょう。

遺言執行者を定めている場合、正本又は謄本をあらかじめ遺言執行者に渡しておけば、あなたの死亡後、遺言執行者が速やかに相続手続に入れます。

そうは言っても、「自分が死ぬまで遺言の内容を誰にも見られたくない」という方も多いですよね。
その場合は自宅のどこか、ただし、遺言執行者や相続人が見つけられるところに保管しましょう。

見られたくない気持ちを優先するあまり、肝心の遺言を、遺言執行者や相続人が見つけられなければ、あなたの遺言を実現できません。
そもそも、あなたが遺言を作ったことを誰も知らなければ、遺言書を探すことも、遺言書の存在を公証役場に確認しよう、とも考えない可能性が高いです。
それでは本末転倒ですよね。

ですので、遺言執行者があなたと同居していないのであれば、「○○に遺言をしまってある」と伝えておきましょう。
同居人で、こっそり見られてしまう可能性があるなら「公正証書で遺言を書いた」と、最低でも一言告げておきましょう。
公正証書であるとわかれば、仮に見つけられなくても、公証役場で再発行してもらえるからです。

以上、今回は、公正証書遺言作成の当日の流れについて説明しました。
滅多に行くことがない場所なので緊張するかもしれませんが、公証人は怖い人ではありませんので、当日はリラックスしてお越しくださいね。

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