民法改正 ― 遺産分割に関する改正

2019年~2020年にかけて、大幅に改正された相続制度が次々と施行されたのは覚えているでしょうか?

今度は、所有者不明土地問題に対処するため、関連する法律(民法)が令和3年(2021年)に改正されています。
そして改正された法律(民法)が来年以降、順次施行されていきますので、今後、少しずつお知らせしていきたいと思います。

今回は、令和5年4月1日に施行される「遺産分割に関する改正」について簡単に説明したいと思います。

現在の法律では、遺産分割についてはなんら期限がありません

相続税の申告が必要な場合は、相続が発生してから10か月以内に相続税の申告・納税が必要なため、その前に遺産分割協議も成立させる必要があります。

ところが、相続税の申告が不要な場合は、遺産分割協議をゆっくりやっても何のお咎めもありません。

「話し合いをしているが分け方について決着が付かない。」
「相続人が各地に散らばっているし、皆忙しくて予定が合わないし、話し合うのが面倒くさい。」
などと言った理由で何年も、時には数十年も放置。
しかしながら、遺産分割協議をせずにほったらかしておいても、役所などから怒られることはありませんでした。

遺産分割協議がまとまらない、ということは、遺産はすべての相続人で「共有」という状態が続きます。
そのままの状態で長年放置していたら、次の相続が発生して、相続人、つまり共有者が増えていきます。
結果、権利関係が複雑化・現在の実質的な所有者が誰かわからない・・・。

これが不動産について大きな問題となってしまったのです。
つまり「所有者不明土地」・「空き家」問題といわれるものです。

そこで今回の改正で、この問題に対処するため関連する法律が改正されました。
そして「遺産分割にもある制限をかける」ということになったのです。

10年経過したら法定相続分で分割!

では、具体的にどのような改正内容となったのでしょうか?

遺産分割の原則は「具体的相続分」での分割です。
そして遺産分割の基準は、「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。(民法906条)」とされています。

相続人の中には、生前に親から贈与を受けた相続人がいたり(特別受益)、逆に親の家業に貢献した・介護に尽くした(寄与分がある)という相続人もいますよね。
特別受益又は寄与分のある相続人がいる場合、その分を遺産分割において特に考慮してほしい、と考える人が多数であると思います。

しかしながら、「相続が発生してから(被相続人が死亡してから)10年経っても遺産分割が決まらないのであれば、画一的に法定相続分で分割する」というのが今回の改正です。

10年を経過したら、

「あいつは親の生前にたくさん贈与を受けている(特別受益)。」
「私は親のためにこれだけのことをした(寄与分)。」
といった事情は考慮しないよ、ということになってしまったのです(民法904条の3)。

ようするに、特別受益・寄与分を巡って満足のいく分割案に決着できるまで延々と話し合う・争うことができなくなってしまいました。

なお、10年が経過し、法定相続分等による分割を求めることができるにもかかわらず、相続人全員が具体的相続分による遺産分割をすることに合意した場合は、具体的相続分による遺産分割が可能ではあります。
(「全員」というところがミソですね。特別受益・寄与分を考慮しない方が得する相続人は具体的相続分による遺産分割をすることにはまず賛成しないでしょう。)

例外は?

以上のように改正がされましたが、引続き具体的相続分で分割できる例外は2つあります。

① 10年経過前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をしたとき
② 10年の期間満了前6か月以内に、遺産分割請求をすることができないやむを得ない事由が相続人に遭った場合において、当該事由消滅時から6か月経過前に当該相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をしたとき

この2つです。

例外が設けられたとはいえ、お気づきのとおり、どちらも家庭裁判所に請求が必要です。
長くかかりそうなら家庭裁判所の手続にのせて、早期の解決をさせよう、という意図が現れていますね。

施行日前に発生した相続については?

改正法は、施行日(令和5年4月1日)より前に相続が開始した場合の遺産分割についても適用になりますので、注意が必要です。

ただし、5年間の猶予期間は設けられています。
この猶予期間が相続開始時期によってどのようになるかは下記をご覧ください。

① 施行時に相続開始時から既に10年が経過している場合

② 相続開始時から10年を経過するときが5年の猶予期間よりも前の場合

③ 相続開始時から10年を経過するときが5年の猶予期間よりも後の場合

以上、今回は、遺産分割についての改正について簡単にお伝えしました。
相続登記も義務化されることになりましたし、いずれにしても今後は特別受益・寄与分があるなら特に「遺産分割は早くする・決着させる」必要があるということですね。

関連記事

  1. 遺留分を請求したい!

  2. 遺言執行者は法定相続情報一覧図の申し出ができる?

  3. 日本人が国外で死亡・外国人が日本で死亡した場合、どの国の法律で相続手続…

  4. 法定相続情報一覧図とは?

  5. 私道の評価額はどう計算する?

  6. 相続税の配偶者の税額軽減