「高齢になってきて、一人で役所関係の手続をするのが不安になってきた・・・」
「年金証書とか大事な書類を無くしてしまいそう・・・」
一人暮らしをしていて、自分の代わりに大事な書類やお金を管理してくれる家族がすぐ近くにいない方は、高齢になってくるといろいろと不安が出てきますよね。
明らかに判断能力が不十分であれば、成年後見制度を利用して、自分の権利や財産を守ってもらうところですが、
「不安には思っているけれども、成年後見を使うほどでもないし・・・」
という方も多いですよね。
その場合には、各市区町村にある社会福祉協議会が主体となって行っている「日常生活自立支援事業」を利用してみてはいかがでしょうか。
日常生活自立支援事業って?
日常生活自立支援事業とは、各市区町村の社会福祉協議会が本人と契約し、本人が安心して生活が送れるよう支援するものです。
このサービスを受けられるのは、判断能力の不十分な高齢者、知的障がい又は精神障がいのある方です。
生活支援員が定期的に訪問し、福祉サービスの利用の援助や暮らしに必要なお金の出し入れのお手伝いをしてくれます。
埼玉県では「あんしんサポートねっと」という名前で、各市町村の社会福祉協議会で支援を行っています。
このサービスを利用するには、社会福祉協議会と契約する必要がありますので、判断能力が不十分と言っても「契約するだけの判断能力は残っている」ことが必要です。
費用は比較的安いです。
定期的な訪問を受けられるので、「見守り」としても利用することができます。
申込は、住んでいる市区町村の社会福祉協議会でできます。
具体的にはどんなサービスが受けられるのか
ここでは、埼玉県のあんしんサポートネットのサービス内容をお伝えしたいと思います。
基本サービス
基本的なサービスは「福祉サービス利用援助」つまり、福祉サービスの利用のお手伝いです。
福祉サービス利用援助の内容は、
・定期訪問と相談
・福祉サービスの内容や利用方法の説明
・福祉サービス利用の際、担当者に自分の気持ちを代わりに伝えてくれる
などです。
選択サービス
上記の基本サービスに加えて、「日常生活上の手続援助」「日常的金銭管理」「書類等預かりサービス」を選択して支援をお願いすることができます。
【日常生活上の手続援助とは】
日常の暮らしに必要な事務手続を支援してもらうサービスです。
具体的には、
・郵便物を整理、内容を説明してもらう。
・市役所で行う手続(例えば住民票の届出など)に同行してくれ、届け出や申込みなどの支援をしてもらう。
・暮らしに必要な手続きの相談を受けられる。
と言った内容です。
【日常的金銭管理とは】
日常の暮らしに必要なお金の出し入れを支援してもらうサービスです。
具体的には、
・自分の代わりに福祉サービスの利用料や病院の医療費、公共料金などの支払いをしてくれる。
・自分の代わりに銀行や郵便局に行ってくれ、生活に必要なお金を届けてくれる。
・自分の代わりに銀行や郵便局でお金の出し入れをしてくれ、お金の使い方を確認してくれる。
と言った内容です。
希望すれば、日常的な金銭管理に使用する通帳と印鑑を預かってくれます。
ただし「日常的」に使う範囲での金銭管理に限られ、大きな財産の管理はしてもらえません。
【書類等預かりサービスとは】
大切な書類などを預かってもらうサービスです。
預かってもらえるものとしては、
・年金証書
・実印
・銀行印
・預貯金の通帳(合計1000万円まで)
・不動産の権利証、契約書
・その他の契約書類
・保険証書
です。
これらのものは、銀行の貸金庫で保管してくれます。
ただし、こちらも高額なもの、例えば書画・骨董や貴金属、株券、現金などは預かってもらえません。
全国社会福祉協議会のパンフレットによると、これらのサービスは、福祉施設や病院に入院した場合でも利用できるようです。
契約締結後、さらに判断能力が低下し、契約できる判断能力がなくなってしまった場合には、この事業以外の援助につながれたり、成年後見制度の利用の支援がされます。
サービスの利用料金は?
こちらも埼玉県の場合の利用料金について、お伝えしたいと思います。
契約締結前の初期相談は無料です。
【福祉サービス利用援助・日常生活上の手続援助・金銭管理】
1回/1時間まで1200円
1時間を超える場合には、以降30分ごとに400円が加算されます。
ただし、日常的金銭管理の援助で通帳を預かってもらう場合、または銀行などで代理により援助を行う場合については、1回/1時間まで1600円です。
【書類等預かりサービス】
1年間の基本料:2000円
1カ月の利用料:500円
生活保護世帯については無料で利用できるとのことです。
サービス利用の流れ
それでは、日常生活自立支援事業のサービスを受けるまでの流れを説明したいと思います。
①相談受付
まずは、住んでいる市町村の社会福祉協議会に問い合わせ、連絡します。
②相談・打ち合わせ
社会福祉協議会の職員が、自宅や施設などに訪問してきます。
そこで、困り事の状況などの相談をします。
困り事の内容によっては、他の機関を紹介されることもあるようです。
③契約書・支援計画の作成
どのような支援をしてほしいか希望を聞かれ、支援内容の計画が作成されます。
併せて契約書が作成されます。
④契約
契約内容に納得できれば、社会福祉協議会と契約を結びます。
⑤サービス開始
支援計画のとおりに、サービスが開始されます。
以上、今回は、一人暮らしの高齢者などが利用できる日常生活自立支援事業についてご紹介しました。
日常のことを自分ですべてやるには少し不安が出てきたときには、料金も抑えられていますし、使いやすいサービスかと思います。
親が遠方で一人暮らししており、ちょっと心配なところが出てきたけれども、家族でなかなか通うことができないこともありますよね。
そのようなときには、このようなサービスがある、ということを親御さんに伝えてみるのも一つの手かと思います。
日常生活自立支援事業は、埼玉県以外の各自治体の社会福祉協議会でも行っています。
ただし、利用料金など多少違うところがあるようですので、お住まいの地域の社会福祉協議会に確認をしてくださいね。