親が生命保険に入っていたか分からない時には? ― 生命保険照会制度

親や家族が死亡した。
または、認知症などで判断能力が低下してしまった。
ところが、その親や家族が生命保険契約に入っていたのかどうかが分からないときがあります。

生命保険に入っていたかどうかがわからないと、保険金の請求ができませんね。
また、死亡保険金は相続税の課税対象ですから、額がわからないと相続税の申告にも支障をきたしてしまいます。

同居していれば、「生命保険に入っているんだ」と以前に聞いたことがあるかもしれません。
が、お互いに離れたところに住んでいた場合、そのような話すら聞いたことがないことも往々にしてあるでしょう。

いずれにしても、生命保険に入っていたかどうかわからない・はっきりしない場合には、まず、
①生命保険証券を探す
②はがきや手紙など、生命保険会社から何かしらの通知物が来ていないか探す
③預金通帳から保険料が引き落とされていないか確認
して、生命保険契約に入っていたかどうかを調べます。

それでもなお、生命保険契約に入っていたかどうかわからない場合があります。
そこで、今回は、このような場合に利用できる「生命保険照会制度」を紹介します。

生命保険照会制度とは

生命保険照会制度は、生命保険協会が行っているものです。
保険契約者または被保険者の死亡や認知判断能力の低下、災害時の死亡もしくは行方不明によって生命保険契約に関する手掛かりを失い、保険金等の請求を行うことが困難な場合に、生命保険契約の有無の照会を受け付けています。

具体的には、照会を依頼すると、生命保険協会は、指定した人が保険契約者または被保険者となっている生命保険契約が有るか無いか、協会に加入している生命保険会社全社に対し調査を依頼してくれます。
各生命保険会社から調査結果が出ると、その結果を生命保険協会が取りまとめて、照会を依頼した人に回答してくれるのです。

ただし、調査対象となる生命保険契約は、照会を受け付けた日現在有効に継続している個人保険契約です。
財形保険契約及び財形年金保険契約、支払いが開始した年金保険契約、保険金等が据え置きとなっている保険契約は調査対象から除かれます。

回答内容は

生命保険協会から回答される内容は、原則として、照会対象者にかかる生命保険契約の有無です。

契約の内容までは回答をもらえません。
照会対象者が死亡している場合で、照会を依頼した人が保険金等を請求することが可能な契約である場合には、その旨も回答してくれます。

回答をもらって、保険契約が存在することがわかったら、各生命保険会社に直接連絡を入れる必要があります。
直接連絡して、契約内容の確認や、保険金・給付金を請求します。

照会方法や手数料は?

では、生命保険協会にはどのように照会をお願いするのでしょうか。
実は、照会を依頼できる人には制限がありますし、手数料もかかります。

以下に簡単に説明します。

照会できる人

照会できる人は以下の人たちです。

【照会対象者が死亡している場合】
①照会対象者の法定相続人
②照会対象者の法定相続人の法定代理人
例えば、照会対象者の法定相続人が未成年の子だった場合、その未成年の子の親が請求できる、というわけです。
このほか、成年後見人も法定代理人となります。

③照会対象者の法定相続人の任意代理人
法定相続人と委任契約を結んだ任意代理人も照会請求ができます。
ただし、弁護士、司法書士など、生命保険協会が生命保険契約の有無を照会するのにふさわしいと認めた人に限られます。
④照会対象者の遺言執行者
亡くなった人が遺言を書いていた場合、遺言執行者は、照会を依頼できます。

【照会対象者の判断能力が低下している場合】
①照会対象者の法定代理人
②照会対象者の任意後見人
照会対象者が任意後見契約を結んでいた場合、任意後見人は照会を依頼できます。
③照会対象者の任意代理人
弁護士、司法書士など、生命保険協会が生命保険契約の有無を照会するのにふさわしいと認めた人に限られます。
④照会対象者の3親等内の親族
3親等内というと、照会対象者から見て、配偶者、子、孫、父母、祖父母、兄弟姉妹、甥姪、おじ・おば、と言った人たちになります。
⑤照会対象者の3親等内の親族の任意代理人
こちらの任意代理人も、弁護士、司法書士など、生命保険協会が生命保険契約の有無を照会するのにふさわしいと認めた人に限られます。

照会方法

照会方法は2通りです。
・Web(オンライン)
・郵送

ただし、郵送でも生命保険協会のホームページにアクセスし、必要書類を請求する必要があります。
電話やメールでは受け付けていない、とのことですので、ご注意ください。

生命保険協会のWebへは下記からアクセスできます。
→ 死亡の場合
→ 判断能力低下の場合

利用料

利用料は、1回あたり3000円(税込み)
クレジットカードまたはコンビニで支払います。

必要書類

どの場合でも、照会を申請する人の本人確認書類は必須です。
このほかの必要書類は、照会を申請する人が誰かによって変わってきます。

【照会対象者が死亡している場合】

照会を申請する人必要書類
法定相続人①法定相続情報一覧図または
相続人と被相続人の関係を示す戸籍謄本等
②死亡診断書
法定相続人の法定代理人①法定代理権の確認書類(登記事項証明書等)
②法定相続情報一覧図または
相続人と被相続人の関係を示す戸籍謄本等
③死亡診断書
法定相続人の任意代理人①任意代理権の確認書類(委任状)
②法定相続情報一覧図または
相続人と被相続人の関係を示す戸籍謄本等
③死亡診断書
遺言執行者①印鑑登録証明書
②遺言書
③遺言者の除籍謄本


【照会対象者の判断能力が低下している場合】

照会を申請する人必要書類
法定代理人①法定代理権の確認書類(登記事項証明書等)
任意後見人①任意後見人の確認書類(登記事項証明書等)
任意代理人①任意代理権の確認書類(委任状)
②生命保険協会所定の診断書
3親等内の親族①生命保険協会所定の診断書
②照会対象者の同意書(本人の同意が取れる場合)
③照会対象者との続柄を証する住民票等
3親等内の親族の任意代理人①任意代理権の確認書類(委任状)
②生命保険協会所定の診断書
③照会対象者の同意書(本人の同意が取れる場合)
④照会対象者との続柄を証する住民票等


以上、今回は、生命保険照会制度についてご紹介しました。
家の中をいくら探しても、保険証券など、生命保険契約に関係する書類が見つからない、と言った場合には、是非こちらの制度を利用してみてくださいね。

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