成年年齢の引き下げ(民法改正)

本年2022年4月1日から、成年年齢は18歳となります。
「成年」つまり、18歳になったら「一人前の大人」として扱われることになります。

そこで今回は、成年年齢が引き下げられることで、相続に関係する事柄ではどう変わってくるかを見ていきたいと思います。

遺産分割協議

遺産分割協議をするにあたり相続人が未成年者だった場合、未成年者には法律行為を行う能力がないとされているため、親権者が法定代理人として遺産分割協議に参加することになります。
法定代理人も相続人である場合には、未成年者と法定代理人とが利益相反する関係にあるので、特別代理人(民法826条)をつける必要があります。

2022年4月1日からは、18歳、19歳の相続人は「成年」となりますので、18歳になっていれば、遺産分割協議に参加して自ら意思表示をすることができます。
特別代理人を付ける必要もなくなります。

そのため、もし、現在相続が発生していて、その中に18歳、19歳の相続人がいらっしゃる場合、遺産分割協議を急いでまとめる必要がないのであれば、遺産分割協議をするのは今年の4月まで待つ方が手続的に楽になるかと思います。

相続放棄

相続放棄も法律行為ですので、未成年者は自分自身で相続放棄をすることができません。
法定代理人が未成年者の相続放棄をの手続を行う、または特別代理人が相続放棄の手続をすることになります。
4月1日からは、18歳になっていれば、自分で相続放棄の手続をすることができます。

遺言の証人

「未成年者」は遺言の証人又は立会人になることができません。(民法947条)
こちらも4月1日からは、18歳になっていれば遺言執行者になることができます。

ちなみに、遺言書の作成は15歳からできることになっている(民法961条)ので、今回の改正による影響はありません。

遺言執行者

未成年者は、遺言執行者になれない(民法1009条)」とされています。
こちらも同様、4月1日からは、18歳になっていれば遺言執行者になることができます。

成年の子の認知

認知をすると相続人の人数が変わってきますね。
成人している子を自分の子として認知する場合には、子の承諾が無いと認知することができません(民法782条)。
自分の子として認知しようと思っている相手が18歳になっていたら、4月1日からは18歳は成人なので、子本人の承諾を得る必要がある、ということになります。

養子(普通養子)

養子を取ると、これも相続関係に影響があります。
未成年者を養子とするには家庭裁判所の許可を得る必要があります(民法798条)。
(自分の孫や配偶者の連れ子を養子とする場合は、家庭裁判所の許可は不要です。)

養子に取ろうと思っていた相手が18歳になっていれば、4月1日からは家庭裁判所の許可を得る必要はありません。

一方、自分自身が養子を取ろうと思っていた場合(養親になろうと思っていた場合)、自分自身が18歳であった場合には養子を取ることはできません。
養子を取ることができる年齢は、18歳に引き下げられませんでした。
したがって、20歳にならないと養親になることはできません(普通養子の場合・民法792条)。

一括贈与の非課税特例にも年齢条件に変更あり

この改正に伴い、一括贈与の非課税の特例についても、年齢条件に変更があるものがあります。
相続税対策で、一括贈与の非課税特例を利用している方も多いので、こちらもご紹介しておきます。

・住宅取得等資金の一括贈与
受贈者(もらう人)の条件は、現行では20歳以上の直系卑属(子や孫)となっていますが、4月1日からは18歳以上となります。

・結婚・子育て資金の一括贈与
受贈者の条件は、現行では20歳以上50歳未満の直系卑属(子や孫)となっていますが、こちらも4月1日からが18歳以上50歳未満となります。

まとめ

以上、今回は4月1日からの成年年齢の変更について、相続に関係するものにつき説明いたしました。
ちなみに、お酒やたばこ公営ギャンブルの解禁年齢は20歳からで変わりはありません。
他にも年齢要件が変わるものと変わらないものとがありますので、法務省のホームページもご確認いただければと思います。

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