死後事務委任契約って何をするの?

お一人様の多い近年、「死後事務委任契約」と言う言葉を耳にしたことがある人もいるでしょう。
しかしながら、そもそもどのような契約なのか、ご存じない方が多いと思います。
そこで今回は、死後事務委任契約についてわかりやすく説明したいと思います。

死後事務委任契約はなぜ必要?

まず、死後事務委任契約は、字を見てお気づきのとおり「死後」のことについてする契約です。

ここで
「死後のことを頼むのは遺言でしょ?」
「死後のことは遺言があれば十分じゃないの?」
と思われる方が多いと思います。

確かに、頼れるご家族、ご親族のいらっしゃる方は、死後のことについては遺言を書いておけば十分です。
しかしながら、いわゆるお一人様や頼れるご親族のいない方は、遺言だけでは不十分なのです。

なぜなら、遺言書に書ける遺言事項は、相続に関する事項、財産処分(遺産の分割)に関する事項、遺言の執行・撤回に関する事項などに限られるからです。

死後においてやらなければならないことは、遺産分けのことだけではないことは、ご両親等を亡くされて死後の手続等を経験されたことがある人はご存知でしょう。
人が亡くなると、葬儀や納骨、健康保険証の返還といったこまごまとした行政手続、未払いの水道光熱費の支払いなど、たくさんの事務手続等が発生します。
ところがこういった細かい死後の後始末については遺言書に書いて頼むことができません。

仮に書いておいたとしても、遺言事項にあたらないため、無意味となってしまうのです。

死後の細かい後始末や事務処理は、通常は何の契約を結んでおかなくても、相続人や親族がいればやってくれることです。
しかし、相続人や親族等、頼れる人がいない人は、これらの仕事をやってくれる人がいません。
自治体も、亡くなったからといってこれらのことを自動的にやってはくれません。
そのため、相続人や後のことを頼めるご親族がいない方は、遺言の他に死後事務委任契約を結んでおく必要があるのです。

死後事務委任契約が必要な人は?

お子さんや甥姪といった親族がいて、死後の諸手続、葬儀、納骨などをやってくれる方がいらっしゃる方は、死後事務委任契約は不要です。
では、死後事務委任契約が必要なのは具体的にどのような人たちでしょうか?

この契約が必要な方は、

・子、孫や甥姪など、自分の相続人となる人がそもそもいない
・子が海外に行ってしまって日本に戻って来ない、または行方不明
・子や孫はいるが重度の障害があって、手続等を頼めない

・甥姪などの親族はいるものの、疎遠なため死後の手続を頼みたくない、または断られた

といった人たちです。

死後事務委任契約でやってもらう仕事は?

では、死後事務委任契約でやってもらう死後の事務手続にはどのようなものがあるのでしょうか。

親など誰かの死後の後始末をやったことが無い方にとってはいまいちピンときませんよね。
そこで、下に例を挙げておきたいと思います。

葬儀供養

・死亡時の立ち会い
・死亡診断書の手配
・火葬許可証の手配
・葬儀社の手配、斎場との調整
・友人、知人等関係者への連絡
・葬儀の立会い、収骨
・納骨、埋葬

費用の支払い代行

・入院費用の支払い
・介護施設への支払い
・葬儀会社への支払い
・火葬料の支払い
・埋葬費用(永代供養料)の支払い
・水道光熱費の支払い
・固定電話、携帯電話など未払いの通信料の支払い
・固定資産税等、未払いの税金の支払い
・クレジットカードの利用残金の支払い

住居の明け渡し、遺品整理

・自宅の家財処分
・老人ホーム等高齢者施設に入っていた場合の家財処分
・遺品整理業者の作業中の立ち会い
・自宅が賃貸だった場合、明け渡し確認
・修繕費やハウスクリーニング費用の確認
・電気、ガス、水道等の解約手続
・NHK、新聞等の解約手続

行政手続

・健康保険証、後期高齢者医療保険証の返納
・年金受給停止手続
・未支給年金の受給手続
・葬祭費の請求
・介護保険料の返納手続
・マイナンバーカードの返納手続
・払い過ぎた医療費等の返還請求

その他

・クレジットカードの解約手続
・各種会員カード等の解約手続
・相続人や親族への報告

以上、一通り死後にやらなければならないことの例を挙げました。
人が一人亡くなると、処理しなければいけないことがたくさんある、ということはお分かりいただけたでしょうか。
人によってはこの他にもやってもわらわなければならない手続が出てきます。

これらの仕事をやってくれる人がいないと、例えば自宅が空き家のまま放置状態となってしまったり、自宅が賃貸だった場合には大家さんは次の人に部屋を貸せない、など、周りに多大な迷惑をかけてしまうことになることも想像できるかと思います。
何の手立ても取っていないと、病院や老人ホームで亡くなった場合は、死後に残った未払い分を清算してくれる人すらいない、といった事態になってしまいます。

というわけで、相続人や頼れる親族がいない場合には、遺言と併せて死後事務委任契約が必要なのです。

以上、今回は死後事務委任契約について説明しました。
自分の相続人となるべき人がいない方や、死後の後始末を頼めるご親族がいない方は早めに先の事を考えておかれることをお勧めします。
当事務所でもこのようなご相談にのっておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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