証券会社の相続手続

亡くなった人が株などの有価証券等を持っていて、証券会社と取引していることもよくありますね。
証券会社も金融機関であることは銀行と変わりませんが、相続手続には銀行よりも手間がかかるところ・銀行とは異なる注意点があります。
そこで今回は、証券会社の相続手続について説明します。

手続全体の流れ

まずは、手続の全体の流れから説明したいと思います。
証券会社における一般的な相続手続の流れは下記のようになります。

①遺言書または遺産分割協議書、戸籍謄本等、必要書類を揃える

②証券会社に相続手続書類一式を提出
相続人が証券会社に口座を持っていない場合、併せて口座開設手続

③相続手続及び有価証券等の移管手続

④相続手続完了

⑤移管された(相続した)有価証券等を相続人で運用または売却

相続人の口座開設・移管手続が必要!

さて、全体の流れの②のところで、銀行の相続手続との違いに気づかれたでしょうか?
銀行の場合、亡くなった人の口座を、そのまま解約または名義変更ができますね。
ところが、証券会社の場合には、亡くなった人の口座をそのまま解約・名義変更することができません

被相続人の有価証券を相続するには、相続人の証券口座に被相続人の株式等を移管する手続が必要になります。
つまり、有価証券等を引き継ぐ相続人が証券口座を持っていない場合には、証券口座の開設手続も必要になるのです。

証券口座は、相続人一人が代表して開設することもありますが、遺産の分け方によっては、各相続人がそれぞれ口座を開設することもあります。

たとえば、遺産分割協議を行った結果、
「お父さんの持っていた株は全部売却して、売ったお金を相続人全員で分けよう」
と言う話になったとします。

このような話になったときに、相続人が誰一人として証券会社に口座を持っていない場合、お父さんが取引していた証券会社から、相続人の誰か一人が代表して証券口座を開設するよう言われます。
代表相続人が口座を開設、その口座に、お父さんの株式を移します。

株式相場は日々変動していますね。
売却するからには高く売りたいと考える相続人が多いはずです。
一方で、とにかく早くお金が欲しいと考える相続人もいますよね。
つまり、株式を売却する時期を相続人間で相談する必要が出てきます。

相続人間の仲が良ければ、スムーズに手続が進むかと思いますが、あまり仲が良くない場合には、誰が口座を開設するのか・売却時期をいつにするのか話し合いをまとめるのに苦労します。

「被相続人の口座内で株を売却して、現金に換えておろせればいいのに・・・」
そのように思われる方は実際多いです。
しかしながら、そのようなことができる証券会社は今のところありません。

つまり、証券会社における相続手続は、
・証券会社に口座の開設・移管手続がいる
・全部売却して換金する場合にも、相続人間で話し合いが必要になる
という点で、預貯金の相続より手間がかかるということなのです。

NISA口座の注意点

被相続人がNISA口座で運用していた場合には、さらなる注意点があります。

①まず、相続する人が移管のためにNISA口座を開設しても、相続したものをNISA口座に移管することはできません
被相続人がNISA口座で運用していたものは、相続人の特定口座または一般口座に移管することになります。

②移管する証券口座は、被相続人が取引していた証券会社と同一でなければなりません。
被相続人が取引していたのが一般口座・特定口座のみであれば、相続人が他の証券会社に証券口座を持っていた場合、その証券会社への口座に移管が可能なのですが、NISAだった場合には、被相続人と同一の証券会社に口座を開設しなければならなくなります。

③被相続人死亡日以降に、被相続人のNISA口座内で受け取った配当金は、非課税となりません
つまり税金が徴収されます。

④相続した者の取得価格は、被相続人が亡くなった日の「時価」となります。
被相続人が特定口座または一般口座で運用していたものを引き継ぐ場合の取得価格は、被相続人の取得価格をそのまま引き継ぎます。

どういうことかと言うと、例えば、元々は被相続人が100万円で買った株が、死亡日には50万円の価値になっていたとします。

この株が、特定口座または一般口座で保有していた株であれば、相続人が引き継いだ取得価格は、被相続人の取得価格のままの100万円です。
しかしNISA口座で保有していた株であった場合、相続人が引き継ぐ取得価格は死亡日の価格の50万円、ということになります。

相続人が売る時には、この引き継いだ株の株価が80万円になっていたとします。
特定口座または一般口座から引き継いだものであれば、元々の取得価格100万円から値下がりしているため、譲渡益はありません。
ところがNISA口座から引き継いだものであった場合、50万円から値上がりしていることになるため譲渡益が発生してしまう、つまり税金がかけられてしまう、ということになるのです。

まとめ

以上、被相続人が証券会社に口座を保有していた場合の相続手続は銀行とは異なる手続・注意点があるということがお分かりいただけたかと思います。
投資を趣味・生きがいでやっておられる方も多いと思いますが、相続人にあまり面倒をかけたくないな、とお考えでしたら、ある程度の年齢になったら証券口座はすべて解約することも考えておくのがよいかと思います。

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