おひとり様が増えている、兄弟姉妹の数も昔と比べて少なくなっている昨今、高齢になったとき頼れる親族がいない人が今後ますます増えてくるかと思います。
このような頼れる親戚がいない友人があなたの身近にいる場合、将来、あなたも友人の病院の付き添いなど身の回りの世話をしたり、葬儀や死後の法要をすることがあるかもしれません。
さて、相続人でないけれども、上記のような療養看護を務めた人は「特別縁故者」として、その友人の遺産の全部または一部をもらえる可能性が出てきます。
特別縁故者って?
さて、親族の代わりにお世話をしたからと言って、誰もが、どんな場合でも特別縁故者として亡くなった方の遺産から財産分与を受けられるわけではありません。
まず、特別縁故者が財産の分与を請求できるのは、相続人がいない場合(一定の期間内に私が相続人です、と名乗りをあげる人が最終的に出てこなかったとき)です。
亡くなったときに相続人がいることが明らかでない場合、亡くなった方の債権者など利害関係人から家庭裁判所に対して相続財産管理人の選任の申し立てがされます。
相続財産管理人が選任されると、相続財産管理人は、亡くなった人の債務を支払ったり、遺言が残されていた場合には、受遺者(遺言で財産をあげると書かれていた人)に指定された遺産を引き渡すなどの手続きをするとともに相続人の捜索をします。
一定の期間、相続人の捜索をしても相続人が見つからない、現れない場合に、初めて、特別縁故者となる可能性がある人は、財産の分与を請求することができるのです。
では、相続人が見つからなかった場合に、特別縁故者になる可能性があるのは、どのような人でしょうか。
法律には、
①被相続人と生計を同じくしていた者
②被相続人の療養看護につとめた者
③その他被相続人と特別の縁故があった者
とあります。
わかりにくいので、具体例を以下にあげたいと思います。
被相続人と生計を同じくしていた者
・内縁の配偶者
・事実上の養子
・同居していた叔父・叔母
・未認知の嫡出でない子
・亡くなった長男の妻(つまり息子のお嫁さん)
・LGBTのパートナー
つまり、同じ家に住んでいたものの法定相続人ではない人たちですね。
被相続人の療養看護につとめた者
・老人ホーム入所時の身元保証人や成年後見人となったほか、何度も老人ホームや入院先を訪れて親身になって被相続人の療養看護や財産管理をした人
・被相続人の唯一の頼りになる相談相手となり、入院に際しては看病につとめ、退院後は自宅に引き取って、生活の一切の世話をし、被相続人の葬儀一切を執り行い、死後法要を欠かさなかった人
つまり、家族同様に親身になってお世話をした人です。
その他被相続人と特別の縁故があった者
審判例としては、
・被相続人を収容看護していた養老院や老人ホーム
・被相続人の菩提寺
・被相続人が代表者をしていた学校法人
などがあるようです。
ちなみに、私が弁護士事務所に勤めていた際は、従兄弟など法定相続人でない親族や障がい者施設などが特別縁故者として認められ、財産をもらった事例がありました。
お世話したとしても残余財産がなければ、財産の分与は受けられない
実際に親身になってお世話した、最終的に相続人となる人も見つからなかった、としても、必ずしも財産の分与が受けられるとは限りません。
特別縁故者が財産分与の請求ができるのは、本来被相続人(亡くなった人)が払うべき債務や、相続財産管理のためにかかった費用(例えば残置物の処理代)など、諸々の諸費用の支払いがすべて済んだあとです。
遺産から支払うべきものをすべて払ったら、実はマイナスだった、残ったが数円程度だったなど本当にわずかな額だった、ということもあります。
この場合には、亡くなった本人のためにいくら親身に尽くしたとしても、貢献した見返りとして財産を分与してもらうことはできません。
(ただし、本人のために立て替えた費用などがある場合には、被相続人に対して債権があることになりますから、払ってもらうことができます。これは特別縁故者としての財産分与請求とは別の手続きになりますので、相続財産管理人が選任されたら、速やかに債権者として申し出ましょう。)
財産分与の最終判断は家庭裁判所
さて、最終的にプラスの財産が残ったので、特別縁故者として、財産を分与してもらえそうな可能性が高くなってきました。
特別縁故者です、と名乗りをあげている人に、財産分与をするかどうかの判断は家庭裁判所が下します。
この分与の相当性(特別縁故者に財産を分与するのが適当かどうか)を判断をするにあたり、実は、家庭裁判所は相続財産管理人に意見を聞きます。
相続財産管理人は、これまでの管理業務を経て得た生前の被相続人の生活状況、特別縁故者として財産の分与を請求している人との関わりの程度などを精査し、意見を書面にして家庭裁判所に提出するのです。
つまり、相続財産管理人、家庭裁判所の双方に「財産を分与するのが適当だ」と認められない限り、特別縁故者として財産を分与してもらえないのです。
意外と長い道のりですよね。
特別縁故者として財産を貰った場合の税金は?
さて、特別縁故者として無事、家庭裁判所に認められ、清算後の残余財産もあったので、その中から財産がもらえることになりました。
この場合、税金はかかるのかどうかも気になるところですよね。
このようなかたちで財産を取得した場合には、相続税法上「遺贈」とみなされ、税金(相続税)がかかります。
財産の評価は裁判所で財産分与の審判があった日の「時価」になります。
税金の申告期限は、分与の審判があったことを知った日の翌日から10か月以内です。
この場合の基礎控除は3000万円ですので、3000万円を超える財産をもらった場合には忘れずに申告しましょう。
また、特別縁故者は相続人ではないので、税金がかかる場合には相続人が相続する場合の2割増になります。
財産分与として不動産をもらった場合
この場合には登記が必要になります。
必要書類としては、裁判所から出される相続財産の処分の審判書の正本およびその確定証明書、財産をもらう人の住民票などが必要になります。
登録免許税は、不動産評価額×2%になります。
特別縁故者として不動産をもらった場合も忘れずに、司法書士に登記を依頼してくださいね。