自筆証書遺言保管制度を使う場合の遺言書の書き方

自筆証書遺言を遺言書保管所(法務局)に預ける場合、遺言書の形式面について細かいルールが決められています。
今回は、この形式面のルールについて説明したいと思います。

遺言書本文

遺言書本文はすべて自書(つまり遺言を残す人本人が自分で手書き)しなければなりません。
遺言書の裏面には何も記載しないでください。(つまり一枚の用紙の両面に遺言内容を記載することは不可)

必ず署名・押印をしましょう。印鑑は実印でなく認印でもかまいませんが、シャチハタなどのスタンプ印は使わないようにしましょう。
また、遺言書を作成した年月日も記載してください。
「〇年〇月吉日」などと日付を特定できない書き方をした場合には保管申請を受け付けてもらえませんので気をつけてください。
必ず「令和2年7月10日」など、「〇日」まできちんと書いてくださいね。

用紙サイズ:A4
文字の判読を妨げるような地紋、彩色などのある用紙は使わないでください。
(模様が文字の判読に支障がなければ申請を受け付けてくれるようですが、なるべく避けることをお勧めします。)

用紙の余白:左辺20㎜以上、上辺及び右辺5㎜以上、下辺10㎜以上
遺言書は、左辺に2穴を開けて保管されるため、必ず20㎜以上の余白をあけてください。
余白の部分には一切何も記載してはいけません。

長期間保管されますので、ボールペンなど、容易には消えない筆記具を使用しましょう。

遺言書の内容を変更・訂正する場合にはその場所が分かるようにして、変更・訂正した旨を付記して署名し、変更した場所に押印をする必要があります。
しかしながら煩雑なので、変更・訂正がある場合には、なるべく書き直すことをおすすめします。

自書によらない財産目録

財産目録は、自書する必要はありません。
ワープロやパソコンで打ち込んで作成してもかまいません。
通帳のコピーや、登記事項証明書の一部分やコピーを財産目録として添付することも可能です。
ただし、全てのぺージに署名と押印が必要です。
財産目録の裏面には何も記載しないでください。(つまり一枚の用紙の両面に財産目録を記載することは不可)
遺言書本文及び財産目録には各ページに通し番号でぺージ数を自署することが必要です。

用紙サイズ:A4
文字の判読を妨げるような地紋、彩色などのある用紙は使わないでください。
長期間保存されますので、財産目録としてコピーしたものを添付する場合には、感熱紙などは使用しないでください。
コピーなどしたものの印字が薄い場合には、印刷・コピーをやり直しましょう。

用紙の余白:左辺20㎜以上、上辺及び右辺5㎜以上、下辺10㎜以上
財産目録も、左辺に2穴を開けて保管されるため、必ず20㎜以上の余白をあけてください。
余白の部分には一切何も記載してはいけません。

通帳のコピーを財産目録として添付するときは、銀行名、支店名、口座名義、預金種目、口座番号が分かるぺージをコピーしましょう。

通帳コピー

不動産の場合には、不動産の所在地、地番、家屋番号などが載っていて遺産となる不動産が特定できるものであることが必要です。
具体的には登記事項証明書のほか、登記情報提供サービスで取得できる登記情報を印刷したものを使用するのがよいかと思います。

形式面のルールは以上のとおりです。
保管制度が開始する前に作成した遺言書でも、以上に説明した形式から外れていなければ保管申請をすることが可能です。

その他

推定相続人(相続が開始した場合に相続人となる人)に遺産を残す場合には「〇〇を相続させる」または「〇〇を遺贈する」と記載します。
(「相続させる」と「遺贈する」の使い分けについては説明が長くなりますので、説明はまた後日とさせていただきます。)

推定相続人以外の人や団体に遺産を渡す場合には「〇〇を遺贈する」と記載しましょう。

遺言書の中で遺言執行者を指定する場合、保管申請時に、保管申請書の【受遺者・遺言執行者】欄に遺言執行者の氏名の記載が求められます。

また同じく、推定相続人以外の人や団体などに対して、財産を遺贈する場合には、保管申請時に、保管申請書の【受遺者・遺言執行者】欄に「受遺者」としてその氏名・名称等の記載を求められます。
推定相続人に対して「遺贈する」と書いた場合には、やはり保管申請書の【受遺者・遺言執行者】欄に「受遺者」としてその氏名の記載が求められます。(「相続させる」と記載した場合については不要です。)

なお、遺言書保管所(法務局)では、遺言書の形式面についてはチェックをしますが、遺言書の内容そのものについては審査やチェックなどはしてくれません。
遺言書の書き方など、遺言書の作成に関する相談にも一切応じてくれません。

遺言書を書くにあたって疑問点や不安な点がある場合には、行政書士、司法書士、弁護士など、お近くの相続の専門家にご相談くださいね。
当事務所でも遺言書のチェックや相談をお受けしております。気になることなどございましたら、小さなことでもお問い合わせいただければと思います

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