・遺言で遺言執行者を指定していたけれども、相続が開始したときには遺言執行者となるはずだった人も死亡していた。
・遺言執行者として指定されていた人が、遺言執行者に就任することを拒絶した。
・そもそも遺言に遺言執行者の指定がなかった。
このような場合には、遺言執行者を選任することが必要です。
そこで、今回は「遺言執行者の選任の申立て」の手続について説明したいと思います。
選任するには家庭裁判所に申立て
さて、遺言執行者を選任するには家庭裁判所に遺言執行者選任の申立てをする必要があります。
遺言執行者選任申立て手続の申立先は、被相続人(遺言者)の最後の住所地の家庭裁判所です。
この申立てができる人は、利害関係がある人です。
具体的には、
・相続人
・受遺者(遺言で遺産をもらうことになっている人)
・相続債権者
・受遺者の債権者
・相続財産管理人
・相続人または受遺者の不在者財産管理人
です。
ところで、遺言執行者がいない場合は、どのような場合にも必ず申立てをしなければならない、というわけではありません。
遺言執行者選任の申立てができる要件は、
・遺言の内容が、法律上又は執行する必要があること
・遺言執行者が存在しないこと
の2つです。
この要件を欠くと、申立てをしても却下されます。
また、遺言の内容が、すべて相続人だけで実行できるようなものであった場合などは、わざわざ選任の申立てをする必要はありません。
(遺言執行者が必要な場合については、以下の記事をご参照ください。
参照:遺言執行者が必要なときって?)
申立てにかかる費用は?
家庭裁判所に支払う申立て費用は、以下の2つです。
①800円
800円分の収入印紙を申立書に貼り付けます。
②郵便切手
各家庭裁判所が定める額を収めます。
「何円切手を何枚」などと指定されるので、その指示に従って用意します。
弁護士等の専門家に申立書の作成などを依頼した場合には、別途その費用もかかります。
申立てに必要な書類は?
申立てに必要な書類は下記のとおりです。
・遺言執行者選任申立書
書式は裁判所のホームページからダウンロードできます。
・申立人の戸籍謄本
・遺言者の除籍謄本
・遺言執行者候補者の住民票または戸籍の附票
・利害関係を証する資料
※申立人が親族の場合は戸籍謄本など。
・遺言書の写し
※検認を受けた自筆証書遺言の場合、検認調書謄本の写し
申立て後の流れ
申立てがあると、遺言執行者候補者及び申立人に、家庭裁判所から「照会書」が送付されます。
照会書が送られてきたら、照会書に記入して返送します。
家庭裁判所は、遺言執行者候補者が適任であるか否かを検討し、選任の審判をします。
審判が終了すると家庭裁判所から審判書が出され、晴れて遺言執行者就任、となります。
遺言執行者が就任したら、あとはこの遺言執行者に粛々と遺言の内容に従って手続を進めてもらう、ということになります。