「家族信託」と巷で見聞きすることが増えてきたけれど、まだまだ「どんなものかよく知らない」という方が多いと思います。
信託契約には、「委託者」「受託者」など耳なれない言葉もよく出てきます。
そこで今回は、家族信託契約が何か全く分からない人のために、家族信託契約とは何か、また家族信託契約の中によく出てくる言葉の意味について説明したいと思います。
家族信託とは?
まず、信託とは、一言でいうと、「財産管理及び財産承継のための制度」です。
もう少し簡単に言うと、「自分の財産を人に預けて、その人に自分の財産の管理・処分してもらう契約」です。
信託は、信託銀行や信託会社も扱っています。
ただし、信託銀行や信託会社の扱っている信託は、信託報酬を得るために業務として行っているもので「商事信託」と呼ばれます。
営業として行う信託サービスなので、「信託業法」の制約があります。
内閣総理大臣の免許や登録を受けないと、商事信託は取扱いができません。
これに対し、家族、知人、友人の間で行う信託を「民事信託」と言います。
営業として、信託報酬を得るために信託を扱うわけではありませんので、信託法の適用はあっても、信託業法の制約はありません。
内閣総理大臣の免許や登録を受ける必要もありません。
この民事信託のうち、特に、家族・親族が受託者になる民事信託契約が「家族信託」と呼ばれています。
委託者、受託者、受益者って?
たいていの契約では、当事者は2名であることが多いですよね。
売買契約なら「売る人」「買う人」。
賃貸借契約なら「貸す人」「借りる人」。
ところが、信託契約には、当事者が3人出てきます。
「委託者」「受託者」「受益者」です。
当事者が3人出てくるうえに、耳慣れない言葉ですね。
ここがまず、他の契約と異なってわかりにくいところかと思います。
では、「委託者」「受託者」「受益者」とは何か説明したいと思います。
委託者:財産を預ける人
元々の財産の所有者です。
信託契約によって目的を実現するために、自分が信頼した人に対して、「自分の財産の管理・処分をお願いします」と頼む人です。
信託契約書に基づいて預けられた財産を「信託財産」と言います。
受託者:財産を預かり管理する人
委託者から預けられた財産を管理したり、必要に応じて処分を行う人です。
単に管理・処分を行うのではなく、委託者が定めた方針に従って管理・処分を行います。
なお、未成年者、成年被後見人、被保佐人は受託者となることはできません。
受益者:信託された財産から経済的利益を受ける人
信託契約は、委託者と受託者の間で取り交わされます。
しかし、信託契約を結んだことで利益を受けるのは、「受益者」です。
信託契約は、この受益者に利益を与えることを目的として締結されるのです。
つまり、信託契約は、受益者のために、自分の財産を信頼できる人に預けて管理・処分してもらう契約だから、当事者が3人出てくる、ということなのです。
とは言っても、必ず3人の人がいないと、信託契約を結ぶことができない、というわけではありません。
委託者と受益者が同一人物、委託者と受託者が同一人物、受託者と受益者が同一人物、と言った場合にも信託契約を結ぶことは可能です。
ただし、契約形態により、一定の制約があります。
ここで家族信託契約を結ぶ、よくある例をご紹介したいと思います。
例えば、アパートを所有・経営している父親が高齢になり、自分では経営が難しくなってきたため、息子にアパートを預けて管理してもらい、入った賃料を父親と母親に入れてもらう、というものです。
この例で言えば、
委託者:父
受託者:息子
受益者:父母
と言うわけですね。
ここまでの説明で、家族信託契約とは何か、委託者、受託者、受益者とは何か、お分かりいただけたでしょうか。
家族信託の活用方法などについては、また随時、記事を追加していきたいと思いますので、是非お読みいただければと思います。