これまで、家族信託契約を結んだ際にかかる税金について、何度か説明してきました。
そうなると、
「どんな書類を、いつ、税務署に提出しなくてはならないのかしら?」
というところが気になりますよね。
そこで今回は、税務署に提出する書類について、説明していきたいと思います。
信託契約時(効力発生時)
まず、家族信託契約を結んだとき、つまり契約の効力が発生したときに、税務署へ書類を提出する必要があります。
内容は下記のとおりです。
提出書類
①信託に関する受益者別調書
②信託に関する受益者別調書合計表
提出義務者:受託者
提出先:受託者の事務所等の所在地を管轄する税務署長
提出期限:家族信託契約を結んだ日の属する月の翌月末日
ちなみに、調書には何を書くかというと、受益者の住所や名前、信託財産の種類・所在場所・価格等です。
書類の提出義務が無い場合
家族信託契約を結んだときには、原則として上記のとおり、税務署に対して書類の提出義務があります。
しかしながら、信託契約の内容が下記に該当する場合には、書類の提出義務はありません。
①受益者別に計算した信託財産の価格の合計額(相続税評価額)が50万円以下の場合
② ①に該当しない(50万円を超える)が、契約内容が自益信託(委託者=受益者)の場合
親が自分の財産を信託財産として子に預け、親が自分自身でその利益を受ける、という信託契約の内容であれば、信託財産の総額が50万円を超えても、税務署に提出する書類は「無い」、というわけです。
家族信託契約を結ぶ、ほとんどの家族は、自益信託を選択することが多いですから、このときは税務署に提出する書類について心配する必要は、ありません。
信託契約期間中
信託契約が始まると、毎年定期的に税務署に提出する書類があります。
内容は下記のとおりです。
提出書類:信託の計算書
提出義務者:受託者
提出先:受託者の事務所等の所在地を管轄する税務署長
提出期限:毎年1月31日
信託の計算書に書く内容としては、信託財産に係る資産、負債、収益、費用、受託者が受け取った報酬の額等です。
信託の計算書の提出義務が無い場合
原則は、上記のとおり、毎年、信託の計算書を税務署に提出する義務がありますが、下記に該当する場合は提出する必要はありません。
・信託財産に係る収益の額の合計額が3万円以下
ただし、信託に係る収益の額に次のものがある場合には、収益の額が3万円以下であっても、信託の計算書の提出が必要です。
・発行済み株式総数の3%未満を所有する、上場内国法人からの配当等
・内国法人から支払を受ける公社債投資信託以外の証券投資信託でその設定に係る受益権の募集が公募により行われたものの収益の分配に係る配等
・特定投資法人から支払を受ける投資口の配当等
※内国法人とは、日本国内に本店または主たる事務所がある法人のことです。
信託の計算書の提出義務が無い例と言えば、例えば、信託財産が自宅や現金のみであった場合でしょう。
自宅は自分で住んでいる限り、収益を生むものではありませんよね。
収益が出る財産の代表は、やはりアパート・マンション、株式といったものになりますね。
契約変更時
信託契約を結んだものの、途中で契約の内容を変更した場合には、やはり税務署に書類を提出する必要が出てきます。
内容は下記のとおりです。
提出書類
①信託に関する受益者別調書
②信託に関する受益者別調書合計表
提出義務者:受託者
提出先:受託者の事務所等の所在地を管轄する税務署長
提出期限:変更があった月の翌月末日
ご覧いただいて気づかれたかと思いますが、信託契約を結んだ時と同じ書類になります。
書類の提出義務が無い場合
書類の提出義務が無い場合は、
・受益者別に計算した信託財産の価格の合計額(相続税評価額)が50万円以下の場合
です。
信託契約終了時
信託の目的を達成するなどして、信託契約を終了させるときも、税務署へ書類を提出する必要があります。
内容は、下記のとおりです。
提出書類
①信託に関する受益者別調書
②信託に関する受益者別調書合計表
提出義務者:受託者
提出先:受託者の事務所等の所在地を管轄する税務署長
提出期限:信託契約が終了した月の翌月末日
書類の提出義務が無い場合
書類の提出義務が無い場合は、下記のとおりです。
①受益者別に計算した信託財産の価格の合計額(相続税評価額)が50万円以下の場合
② ①で50万円を超えていたが、信託契約終了直前の受益者に、信託財産の残余財産が帰属する場合
つまり、信託契約期間中、契約終了直前まで信託財産から利益を受けていた人が、契約終了時に残っていた財産をそのまま受取る場合には、受益者別調書などを提出する必要はありません。
契約中の受益者とは全く別の人が、残っていた信託財産を受取る場合には、書類を提出する義務が発生します。
以上、今回は、家族信託契約を結んだ場合に税務署に提出する書類についてご説明しました。
受託者を引き受けたけれども、これらの書類を書くのが難しい場合には、税理士に書類作成を依頼することも可能ですので、ご安心ください。