家族信託の契約内容等の変更時にかかる税金について

家族信託契約を結び、信託を始めたものの、途中で受益者や契約内容を変更する必要が出てくることがあります。
今回は、途中で家族信託契約の変更を行った場合にかかる税金について、ざっくりと説明したいと思います。

受益者の変更があった場合

税金は変更の前後で経済的価値がどのように移転したかで課税されます。
信託契約において経済的利益を受けているのは受益者ですので、旧受益者と新受益者の間で、どのように経済的価値が移ったのかで課税関係が生じます。

適正対価の授受がある場合

新しく受益者となる人が、受益権をもらう代わりに適正な対価を元々の受益者(旧受益者)に与えていた場合、旧受益者には譲渡所得税が課せられます。
新受益者には課税されません。

適正対価の授受がない場合

旧受益者から新受益者に対し、受益権を引き渡すにあたって適正な対価の授受が無かった場合、「贈与」があったものとして、新受益者に贈与税が課税されます。
旧受益者が死亡したことにより、新受益者に受益権が移転した場合には、「遺贈」があったものとして新受益者に「相続税」が課税されます。

受益者が複数いて、各受益者の受益割合が変更されたときも、上記と同様に、適正対価の授受の有無等を見て、課税がされます。

受益者以外の変更

受益者には変更がなく、それ以外の変更で、経済価値の移動が発生しない以上は、次の流通税以外の税金は、発生しません。

流通税

家族信託契約を結ぶと、流通税がかかりましたよね。
では、信託内容を変更すると流通税はどのようなものが発生するか、みていきたいと思います。

印紙税

信託契約書を作り直す場合や、受益権の譲渡契約書(受益権が1万円以上である場合)を作成した場合には、1通につき200円の印紙が必要になります。

登録免許税

信託財産の中に不動産があった場合、信託設定時に、①財産権の移転登記、②信託の登記、の2つの登記をしています。
信託内容に変更があった場合には、この2つの登記内容を変更する必要が出てきます。

①財産権の移転登記
ア 受託者の変更
委託者から財産を預かって管理している「受者」に変更があった場合には、旧受託者から新受託者に信託財産を移す必要があります。
したがって変更登記が必要になるのですが、登録免許税はかかりません。

イ 受託者以外の変更
受託者には変更がなく、それ以外の内容につき変更があった場合には、財産権の移転登記をする必要はありません。
経済的利益を受けている受益者に変更があっても、財産を管理している受託者に変更が無ければ、移転登記をする必要性は発生しません。

したがって、登録免許税は発生しません。

②信託の登記
不動産が信託財産である場合、信託の登記として受託者や受益者の住所・氏名などが登記されています。
これら登記されている内容に変更がある場合には、変更の登記が必要になりますので、変更に係る登録免許税がかかります。
こちらは不動産1個につき1000円かかります。

不動産取得税

不動産の所有権が移転すると、不動産取得税が発生する可能性があります。
では、信託契約内容に変更があった場合はどうなるのか、気になるところですよね。

①受託者に変更があった場合
受託者が変わると、旧受託者から新受託者に信託財産の所有権が移転します。
しかしながら、この場合の不動産取得税は発生しません。

②受託者以外の変更
受託者には変更がなく、それ以外の内容について変更があった場合、信託財産の所有権はそもそも移転しません。
したがって、この場合も不動産取得税は発生しません。

税務上の手続は?

受益権の移動があった場合、受託者には税務上の手続をする必要が出てきます。
具体的には、信託財産の相続税評価額が50万円を超える場合、①信託に関する受益者別調書、②信託に関する受益者別調書合計表を、所轄の税務署に提出する必要があります。
期限は、受益者の変更が生じた日の属する翌月末日です。

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