「家族信託をするのはいいけれど、何か税金がかかるのではないか?」
税金のことは、気になるところですよね。
そこで今回は、家族信託を設定したときにかかる税金について説明したいと思います。
契約形態で課税は変わる
家族信託契約では、契約形態で課税されるかされないか、何税が課せられるかが変わってきます。
税金は、信託契約による利益を誰が受けるか、つまり「受益者が誰か」によって課税関係が変わるのです。
財産を預ける人(委託者)から見て「受益者が誰か」という観点からは、契約形態は、大きく2つに分けられます。
自益信託と他益信託です。
・自益信託:財産を預ける人本人が、信託による経済的利益を受ける信託契約(委託者=受益者)
・他益信託:財産を預ける人以外が、信託による経済的利益を受ける信託契約(委託者≠受益者)
では、この2つについて詳しく見ていきたいと思います。
自益信託
自益信託は、財産を預けた本人が、その財産から経済的利益を受けます。
つまり、委託者と受益者が同一人物であるのが自益信託です。
自分で自分に何かをあげても、何か経済的価値のあるものがどこかに移動したわけではありませんよね。
したがって、後ほど説明します、流通税以外、税金はかかりません。
家族信託を設定するご家族は、親の財産を子に管理してもらって、財産から生じる利益は親が受け取る、という内容の契約を結ばれるご家族が大半かと思います。
このような場合には、設定時の税金は流通税だけを考えればよい、ということになります。
他益信託
他益信託は、財産を預けた本人以外の人が、預けられた財産から経済的利益を受けます。
つまり、委託者と受益者がそれぞれ別な人である場合です。
この場合には、税金が発生します。
ここで、ちょっと家族信託契約は脇において、よくある取引・契約においてかかる税金を見てみましょう。
例えば、人にタダでモノやお金を上げた場合、贈与税がかかりますね。
一方、売買で、モノを引き渡してお金をもらった場合、儲かった部分(売却益)について譲渡所得税がかかります。
モノをあげるのに対し、適正な対価をもらってない場合は贈与税、適正な対価をもらっている場合は譲渡所得税がかかる、という寸法です。
これと同じことが、信託契約でも起こります。
委託者が受益者に信託財産から発生する利益(受益権)をあげる代わりに、適正な対価をもらうか、もらわないか、で課せられる税金の種類や課税される人が変わります。
信託契約においては、委託者・受益者共に個人、委託者又は受益者のどちらか一方が法人、委託者・受益者共に法人という形態があります。
しかしながら、家族信託契約においては、委託者・受益者共に個人、というケースがほとんどですので、ここではこちらに限って説明したいと思います。
①委託者が受益者から適正な対価を貰っていない場合
委託者:課税されない
受益者:贈与税が課される
②委託者が受益者から適正な対価を受取る場合
委託者:譲渡所得税が課せられる
受益者:課税されない
他益信託の場合は、以上のようになります。
流通税
下記にあげる流通税に関しては、自益信託、他益信託、どちらであってもかかる税金となります。
①印紙税
不動産の売買をしたことがある人などは、見たことがあるかと思いますが、一定の文書を作成すると、「印紙税」というものがかかります。
信託契約書を作成すると、この「印紙税」が、1通につき200円かかります。
②登録免許税
不動産を信託する場合には、ア.所有権「移転」登記と、イ.所有権「信託」登記の2つを行います。
所有権「移転」の登記は、いつ、誰から誰に所有権が移転したのか、ということを登記します。
これに対し、所有権「信託」登記は、何を登記するかと言うと、信託の目的、委託者、受託者及び受益者の氏名及び住所、信託財産の管理方法、信託の終了事由など、信託の内容を登記します。
ア.所有権移転登記
通常、売買などで不動産の所有権を移転する場合は、所有権移転登記をする際、登録免許税がかかります。
しかしながら、委託者から受託者に信託のために所有権を移転する場合には、所有権移転登記についての登録免許税はかかりません。
イ.所有権信託登記
信託をする場合、所有権移転登記については登録免許税はかかりませんが、所有権信託登記については登録免許税がかかります。
かかる登録免許税は、
固定資産税評価額×0.4%(土地の場合、令和5年3月31日まで0.3%)
です。
③不動産取得税
不動産を信託すると、委託者から受託者に不動産が移転します。
売買などで不動産の所有権を移転させると「不動産取得税」がかかります。
しかしながら、信託財産として委託者から受託者に不動産を移転させる場合には、不動産取得税はかかりません。
以上、今回は、信託設定時にかかる税金についてご説明しました。
信託期間中や、信託終了時にかかる税金についてはまた後日、記事を上げていきたいと思います。