法定相続情報一覧図とは?

法定相続情報証明制度は、相続人が法務局に必要な書類を提出すると、登記官が内容を確認したうえで、法定相続人が誰であるのかを登記官が証明する制度です。
その証明書となるのが、法定相続情報一覧図です。
この制度は、相続登記を促進するために、法務省において新設されたものです。
相続登記の促進が制度創設の趣旨ですが、法定相続情報一覧図を作成すると、相続登記だけでなく、様々な相続手続に活用できます。

法定相続情報一覧図ってどんなもの?

まず、法定相続情報一覧図とは下記のようなものです。

出典:法務省ホームページより

見てのように、相続関係説明図のようなものです。
被相続人とその法定相続人が記載されます。
ただし、被相続人の相続開始前に死亡してしまった相続人については法定相続情報一覧図には名前が載りません。
被相続人については、最後の住所、本籍、出生日及び死亡日が記載されます。

人によって相続関係が異なるので、法定相続情報一覧図が複数ページにわたる場合もあります。

法定相続情報一覧図はどの手続で使えるの?

まず、不動産の相続登記に使えます。
もちろん銀行の相続手続にも使えます(遺産に不動産が無くても作成してもらえます)。
相続税の申告書にも戸籍謄本の代わりに添付できます。
さらに、令和2年10月26日から、遺族年金、未支給年金、死亡一時金の請求に関する手続において、死亡した人との身分関係等を証明する添付書類の一つとして使えるようになりました。

法定相続情報一覧図の写しを法務局で作成してもらうと、各種相続手続で戸籍謄本等一式の提出の省略が可能になります。
つまり、相続手続をするときには、いままでは何通もの戸籍謄本の束を手続する窓口に持っていかなければならなかったものが、代わりに法定相続情報一覧図の写し1通を持っていくだけでよくなったのです。

この制度ができるまで、相続手続の担当者は、必要な戸籍がすべて揃っているか、誰が相続人なのか、相続関係に漏れがないか、何通もの戸籍をチェックして確認しなければなりませんでした。
相続人が多かったり、相続関係が複雑だったりすると、戸籍謄本の数も膨大になり、チェックに時間も手間もかかりますし、慣れない担当者だとチェック漏れしてしまうことさえありました。

ところが、法定相続情報一覧図は、1枚(場合により複数ページになることもありますが)見るだけで、相続人が誰か一目でわかります。
既に法務局で確認・証明も受けていますので相続人の漏れもなく、相続手続の担当者も安心です。
法定相続情報一覧図の写しは複数交付してもらえますから、複数の相続手続がある場合には同時に進められ、相続手続担当者にとっても、相続人にとっても手続の時間短縮になるのです。

法定相続情報一覧図を作成するにあたり必要な書類

まず、必ず用意する書類は、下記のものになります。
①被相続人(相続される人)の出生から亡くなるまでの連続した戸籍謄本及び除籍謄本
②被相続人(相続される人)の住民票の除票
③相続人全員の現在の戸籍謄本または戸籍抄本
④申出人(相続人の代表となって相続手続を進める人)の住所・氏名を確認することができる公的書類
具体的には、運転免許証のコピー、マイナンバーカードの表面のコピー、住民票の写しなどです。
※運転免許証やマイナンバーカードの写しを持参する場合には、申出人自身でコピーの余白に原本と相違がない旨を記載し、申出人の記名・押印をする必要があります。

場合によって必要になるものとしては次のとおりです。
⑤各相続人の住民票の写し
※法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載する場合
⑥委任状(代理人が申出の手続をする場合)
⑦代理人が親族の場合は申出人と代理人が親族関係にあることがわかる戸籍謄本、資格のある専門家が代理人になる場合には資格者代理人の団体所属の身分証明書
⑧②の書類を取得することができない場合には、被相続人の戸籍の附票

①、②(⑦)、③及び⑤の書類については、相続関係一覧図の写しを交付してもらう際に登記官から返却してもらえます。

法務局に払う手数料はありません。無料で保管・写しの作成をしてもらえます。

一覧図の写しが追加で必要になった場合も無料で再交付を受けられます。
法務局に提出された法定相続情報一覧図は、登記所において5年間保管されます。
したがって、5年の間はいつでも再交付を受けることが可能です。
ただし、申出人以外の相続人は再交付を受けることができません。
申出人以外の相続人が再交付を受けるには、申出人から委任状をもらいましょう。

再交付を受ける際の必要書類は、
①再交付申出人の氏名・住所を確認できる書類
具体的には、運転免許証の表裏のコピー、マイナンバーカードの表面のコピー、住民票の写しなどです。

代理人が再交付の申出をする場合には、
②委任状
③代理人が親族の場合は、申出人と代理人が親族関係にあることがわかる戸籍謄本、資格のある専門家が代理人になる場合には資格者代理人の団体所属の身分証明書
も必要になります。

法定相続情報一覧図の作成方法は?

法定相続情報一覧図は、相続人か代理人が作成します。
自分で作るのは大変、と言う人は専門家に頼んで作成してもらうことも可能です。
法定相続情報一覧図の作成を頼める専門家は、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士です。
専門家でない人に代理で作ってもらう場合には、申出人(相続人)の親族にしか頼めません。

出典:法務局ホームページより

法定相続情報一覧図は、A4サイズの丈夫な白い紙に記載して作成します。
パソコンでなく、手書きで作成しても大丈夫です。
ただし、鉛筆書きは不可です。

住所、本籍、生年月日、死亡年月日は、戸籍謄本及び住民票(又は戸籍の附票)の通りに記載します。
例えば、戸籍謄本の死亡日に「推定」と入っている場合には、一覧図の死亡日も「推定〇年〇月〇日」と記載します。
住所では、建物名が(○○アパート)のようにカッコ書きで書かれているときなどは、このカッコ『( )』も入れて記載します。
普通養子の場合は続柄は「養子」となりますが、特別養子の場合には、戸籍に記載される続柄は「長男」「長女」などとなるので、「長男」「長女」などと書き、特別養子とは記載しません。

法定相続情報一覧図には、相続人の住所を載せても載せなくてもかまいません。任意です。
ただし、法定相続情報一覧図に住所を載せておけば、相続登記の時に改めて相続人の住民票を添付する必要がなくなります。
したがって相続登記がある場合には、作成時には少し手間がかかりますけれども、相続人の住所も載せておきましょう。
また、銀行によっては、相続人の住所を入れたものが欲しい、と言ってくるところもあるようですので、遺産に不動産が無くても住所は入れておいたほうが無難かと思います。

一覧図を作成したら、申出書に必要事項を記入し、用意した必要書類と共に法務局(登記所)に申出(提出)します。

出典:法務局ホームページ

被相続人名義の不動産がある場合には、不動産の「有」にチェックを入れ、不動産の所在事項又は不動産番号を記載します。
不動産の所在事項や不動産番号は、不動産の登記簿謄本に記載されています。

申出書のダウンロード先はこちらへ

申出先

申出をする法務局(登記所)は、
①被相続人の本籍地
②被相続人の最後の住所地
③申出人の住所地
④被相続人名義の不動産の所在地
になります。

申出は、法務局の窓口に直接行ってすることもできますし、郵送によることもできます。

できあがるまでの期間

法務局や混み具合などによって多少変わりますが、必要書類を提出してから、おおよそ一週間程度あれば、どこの法務局でも大体出来上がるかと思います。
川越法務局だと、おおよそ中二日で出来上がります。
相続人に配偶者・子がおらず、兄弟相続(兄弟姉妹・甥姪が相続人)で相続人が多数おり、相続人調査のために約60通も戸籍謄本を取得せざるを得なかったケースでは、法務局で一覧図を作成してもらうのに丸々2週間かかったことがありましたが、ここまで日数がかかってしまうケースは稀です。

以上、今回は法定相続情報一覧図についてご紹介しました。
被相続人の財産が銀行が1、2行しかない、と言う場合には、わざわざ一覧図を作成しなくても事足りるかと思います。
銀行が3行以上ある、不動産もある、相続税の申告もある、といった場合には、手続時間短縮のため、作成した方が何かと便利かと思います。

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