今回は、公正証書遺言を作成するときの必要書類について説明します。
公正証書遺言は、公証役場に相談に行ったらすぐに作れる、というものではありません。
まずは公証役場に連絡を入れて、どのような内容の遺言にするか打ち合わせをし、それに応じて必要な書類の提出が求められます。
作成打ち合わせ時に用意する書類
公正証書遺言を作成するにあたり、提出を求められる書類は、おおよそ以下のとおりです。
①遺言者本人の戸籍謄本
②遺言者と相続人との関係がわかる戸籍謄本
③受遺者の住民票
④固定資産税納税通知書又は固定資産評価証明書
⑤不動産の登記簿謄本
⑥証人の確認資料
⑦遺言執行者の特定資料
①、②、③(遺言者・相続人の戸籍謄本、受遺者の住民票)について
①、②、③は正確な氏名、生年月日、住所を確認するために提出が求められます。
髙橋さん、渡邉さん、山﨑さん、など、戸籍に記載されているとおりに、氏名の漢字が公正証書遺言に記載されます。
また、遺言者と相続人の関係を正確に把握するため、これらの書類が求められます。
①の遺言者本人の戸籍謄本は、どのような遺言内容であっても必ず必要となります。
②、③の書類は、遺言者が誰に遺産をあげるつもりであるかによって、必要であるかどうかが変わります。
相続人だけに財産をあげるのであれば、②の遺言者と相続人の関係がわかる戸籍謄本を用意します。
相続人以外の人だけに遺産をあげるのであれば、③の受遺者(遺産をもらうことになる人)の住民票が必要です。
相続人及び相続人以外の人、双方に遺産をあげるのであれば、②、③両方の書類の用意が必要です。
④固定資産税納税通知書又は固定資産評価証明書
④の固定資産税納税通知書又は固定資産評価証明書は、保有している不動産の確認と公証人が公正証書作成手数料を見積もるために提出が求められます。
⑤不動産の登記簿謄本
⑤不動産の登記簿謄本は、不動産の地番等の表示や持分を、正確に公正証書遺言に記載するためです。
相続登記などの手続を進めるためには、公正証書遺言に不動産の正確な表示をしておくことが必要だからです。
⑥、⑦証人・遺言執行者の確認書類
⑥の証人の確認資料は、たいてい運転免許証の写しの提出を求められます。
運転免許証が無い場合は、マイナンバーカードなどの本人確認書類を提出します。
これは、証人の氏名、生年月日、住所を確認するためです。
また、証人の職業も遺言書に記載されるため、職業も尋ねられます。
⑦の遺言執行者は、たいてい相続人か受遺者がなることが多いので、その場合は追加資料は求められません。
相続人・受遺者以外の人が遺言執行者となる場合は、その人の氏名、生年月日、住所を確認できる資料を求められます。
その他
このほか、遺言の内容や財産内容、公証人、公証役場の方針によっては、追加の資料を求められることがあります。
例えば、預貯金があり、銀行名・口座番号などを記載する場合には、支店名・預金種類・口座番号等が確認できる通帳の見開きページの写しが要求されます。
預貯金を正確に特定するためです。
また、公証人の手数料を計算するため、預貯金のおおよその額も公証人から尋ねられます。
ただし残高証明書まで要求されることは、あまりありません。
株式等、有価証券の場合も、預貯金と同様、特定できる資料を要求されます。
高齢の方が遺言の作成を希望する場合には、医師の診断書を取るよう言われることがあります。
これは、ご高齢である場合、遺言作成能力(遺言の意思能力)が十分にあるかどうか、事前に確認するためです。
相続人、受遺者以外の人を祭祀主宰者に指定した場合には、この祭祀主宰者の情報のメモ又は住民票の提出が求められることがあります。
これも、祭祀主宰者となる人の氏名、生年月日、住所などを正確に遺言書に記載するためです。
遺言作成当日に持参するもの
遺言者と公証人との間で遺言内容を十分に打ち合わせをし、遺言の文案が確定したら、いよいよ遺言書の作成になります。
日時を決め、公証役場に遺言者が行く、又は公証人に遺言者の自宅や病院などに出張してもらって、遺言書を作成します。
作成当日に、遺言者及び証人が持参する書類は以下のとおりです。
【遺言者本人】
①印鑑登録証明書1通(発行されてから3か月以内のもの)
②実印
③免許証、マイナンバーカード、健康保険証などの本人確認書類
④公証人に支払う手数料
①の印鑑登録証明書は、事前に公証役場に提出してある場合は、当日持っていくのは、②と③のみです。
②の実印は、印鑑登録証明書に登録されている印鑑です。
似たような印影の違う印鑑を持って行かないよう、事前にしっかり確認しましょう。
④手数料については、前日までに連絡があるので、言われた額を現金で用意します。
【証人】
①運転免許証、マイナンバーカード、健康保険証などの本人確認書類
②認印
証人が用意する印鑑は、実印でも認印でもどちらでも可能です。
以上、今回は、公正証書遺言作成時の必要書類についてお伝えしました。