親に遺言を書いてもらった方がいいのかどうかわからない人必見!遺言を用意する目的とメリット

「親に遺言を書いてもらった方がいい、と聞くけれど、ウチの親には書いてもらう必要があるのかなあ?」という考えたことはありませんか?
また、「遺言って本人のためだけのものじゃないの?」という疑問を持ったことはありませんか?
「遺言」と言っても、何で書く必要があるのか(書く目的)、書くとどんなメリットがあるのかもよくわからない、と思っている方が多いのではないでしょうか。目的やメリットがわからないものを、用意しようとは思いませんよね。
そこで今回は、1.遺言を書く目的、2.遺言を書くメリット、3.遺言を書く必要があるのはどんな人なのかについて、説明したいと思います。

1.そもそも遺言は何のために書くもの?

遺言を書く目的は、2つあります。
①自分のために書く
②残される家族のために書く
この2つです。

(1)自分のために書く

まず、遺言を書くのは「自分のため」、つまり、死後に自分の意思を実現させるためです。そもそも遺言は本人が自分の意思で書くものです。
ですから、遺言を書いてほしいと思っても、本人に書く気がないのに強制することはできません。
でも、上記にあげたように、遺言は自分のためだけに書くものではないのです。

(2)残される家族のために書く

残される家族のために書く、の具体的な内容は、
ア 相続手続の手間を減らす
イ 相続トラブル防止
の2つです。
遺言を書くことで、残される家族をわずらわしい相続手続の手間を減らし、相続トラブルから守ることができる(ただし、内容に不備がない場合に限ります。)のです。
あなたが親に遺言を残してもらった方がいいかもしれないと感じているのだとすれば、アかイのいずれかに不安があるからではないでしょうか?

2.遺言を書く5つのメリット

では、遺言を書くことで具体的にどんなメリットがあるのでしょうか?
メリットは5つあります。
①生きている間に、自分の希望するとおりに財産の分け方を決めておける
②法で決められた相続人以外の人にも財産を渡せる
③相続に必要な手続きが少なくて済む
④遺産分割を話し合う必要が無くなる
⑤揉め事を回避できる
①②は遺言を書く本人にとってのメリットです。
③④⑤は残される家族にとってのメリットです。

(1)本人側のメリット

本人側のメリットは、ズバリ、死後の自分の希望を叶えることができることですよね。
具体例をあげると、
・祭祀財産(お墓や仏壇など)を家族の中に継がせたい人がいる
・自宅は長男に、畑は次男に、株は長女に、など、どの財産を誰に継がせたいか決めている
・家族以外にお世話になった人に財産をあげたい
・財産を寄付したい団体や法人がある
と、いった場合に、これらの希望を叶えるには遺言が必要になってきます。
遺言を残さない限り、法定相続人以外には財産を渡せませんし、「あの財産を、この子に渡したい」と思っても確実に渡すことができないからです。

(2)家族側のメリット

相続が開始すると、死亡届の提出から、お葬式、年金の支給停止の手続き、電気水道を止めたり・・・とやらなければならないことが次々出てきます。
なかでも大変なのが、相続人間でどのように遺産を分けるか話あう遺産分割協議です。
相続税を納める必要があるなら、10か月以内に遺産分割協議がまとまらないと、預貯金も解約できませんし、不動産も売却できませんから、税金を納めるのにどうしよう、と悩むことになります。すんなり話がまとまればいいですが、遺産はとかくキレイに分けにくい財産が多いもの。決まるまで時間がかかりがちです。
さらに、
・相続人が北海道から沖縄まで各地に散らばっている
・相続人の中に海外在住の人がいる
なんてことになったら相続人一同が集まって話し合うのも難しいですよね。
そんなとき、遺言で誰が何をもらうか決められていれば、そのとおりに分ければいいので遺産分割協議で話し合う手間が省けます。
たとえ揉めていたとしても、きちんとした内容の遺言があれば、そのとおりに手続を進めることが可能です。
また、不動産の相続登記が必要な場合にも、内容が整った遺言があれば、亡くなった本人の戸籍謄本については、 出生から死亡まですべて取り寄せる必要はなく死亡がわかるものだけ用意すればよい、など多少なりとも手間を減らすことができるのです。

3.遺言を書く必要があるのはどんな人 ?

上記はメリットの面から、遺言を書いたほうがいい場面をあげました。
それでは、遺言を書く必要があるのはどんな人でしょうか。
ざっくり分けると2つのタイプに分かれます。
Ⅰ 人に問題がある。
Ⅱ 財産に問題がある。
問題がある、というと語弊があるかもしれませんが、要するに、人もしくは財産が原因で、遺産分割協議がまとまりにくい、または揉める可能性が高い、という意味です。
このⅠ、Ⅱに該当する場合は遺言を用意する必要性が高い場合になります。
親だけでなく、あなたも下記の例に該当しないか是非チェックしてみてくださいね。

(1)人に問題がある

具体例を挙げます。
・ずっと独身で子がいない
・結婚しているが子はいない
・パートナーがいるが結婚はしていない(内縁の夫婦、パートナーが同性)
・再婚した。前配偶者との間に子がいる
・離婚、再婚を繰り返し、各配偶者間との間に子がいる
・実は浮気して認知した子がいる
・配偶者に連れ子がいる(養子縁組はしていない)
・家族間がとても仲が悪い。すでに争っている、など。
・相続人ではないのに、将来遺産分割にうるさく口を出す可能性の高い人がいる
・相続人の中に行方不明の人がいる
・相続人の中に海外在住の人がいる(しかもなかなか連絡がとれない。)
・相続人の中に障がいを持っている人がいる
・相続人の中に認知症の人がいる(父母のどちらかが既に認知症になっている)
・相続人の中に未成年者がいる(幼い孫養子を取った場合)
・親の自宅に同居している子と同居してない子がいる
・親の面倒を見ている子とまったく面倒を見ない子がいる
・子の中に生活に困っている子がいる(引きこもり、ニートなど)
・子の中にあまりにも素行が悪い子がいる(親も兄弟姉妹も財産を渡すべきではないと考えている)

いかがでしょう?どれかに該当していませんか。

よく勘違いしている人が多いのが、結婚しているけれども子がいない夫婦です。夫が亡くなったら妻が全財産を引き継げると思っていませんか?残念ながら、夫の親又は兄弟姉妹が存命であれば、これらの人たちと遺産分割協議をしなければなりません。ただし兄弟姉妹には遺留分がないので、遺言で全財産を妻に渡すようにしておけば、妻は夫の兄弟姉妹と遺産分割協議をする必要がなくなります。

また、離婚後、まったく子に会っておらず養育費も払わなかった、全くの音信不通、縁が切れているから自分の相続のときには関係ない、などと思っていませんか?妻とは縁が切れたかもしれませんが、子とは血がつながっています。相続のときには「私にも貰う権利があります。養育費をもらえなかったので多くもらいたいです。」と言ってきた人を、弁護士事務所勤務時代に私は実際に見ています。

それから最近増えてきているのが、相続人の中に認知症の人がいるケースです。お父さんが亡くなって遺産分割協議をしようと思ったら、お母さんが既に認知症。こうなると遺産分割協議ができません。銀行で父の預貯金を解約しようと思っても「成年後見人をつけてください。」と言われてしまいます。家族の遺産分割協議に成年後見人、もしくは特別代理人という名の他人が入ってくることになります。

親の介護を一生懸命やった子と会いに来ることもしなかった子、どちらも法定相続分は同じです。介護をした見返りを求めるわけでなくても、遺産分割協議で「平等に法定相続分ね。」と親に冷たかった方の子に言われて喧嘩が勃発するというのもよくあるケースです。

また、生活に困っている子がいる場合には親として配慮しておきたいでしょうし、子の兄弟姉妹の方も後々扶養などの負担を負わされるのは困るから何か考えておいてほしいと思っているかもしれません。
このような場合には、やはり遺言で配慮しておいた方が、よいかと思います。

(2)財産に問題がある

具体例は下記のとおりです。
・分けにくい財産が多い(預貯金に比べて不動産の評価額がとても大きいなど。例:自宅)
・農地がある。農業を営んでいる
・処分が難しい原野や山林がある。もしくは誰も引き取りたくない不動産がある。
・借金や保証債務がある
・個人事業主である
・会社経営者である(株式などがある)

例を見てお分かりのように、法定相続分で分けようと思っても平等に分けることが難しいものばかりです。遺産分割協議ですんなり話し合いの決着がつきそうにないものばかりです。

例えば、自宅を引き継ぎたいと考えていたとしても、親の預貯金が少なかったり、自分で用意できるお金が少なかったら、他の相続人に対し、自宅をもらった代わりに払う代償金が払えません。

農地も、大体相続人のうちの誰か一人が後継者ですから、相続人みんなで細切れに分けるわけにいきません。広大な農地はあるけど預貯金はない、となればやはり上記の自宅と同じ問題が起きてきます。

原野など誰も引き取りたくない不動産にも税金上評価額がつくので数字上では価値があっても、市場では買い手のつかない、もらっても使えないものなんて誰も受け取りたくないですよね。でも相続人皆で放棄しようと考えても、いらないものだけ相続放棄することはできません。相続放棄の手続きをするには、他の価値がある遺産もすべて放棄しなければならないので現実的ではありません。例えば他の価値がある財産と抱き合わせで特定の相続人に受け取ってもらうよう遺言で指定しておくほうがいいでしょう。

事業を営んでいる場合にもやはりお店や会社の財産を切り分けるのが難しいですよね。農地と同じく切り分けたら事業の継続は不可能です。
不平等に分けるしかないからこそ、遺言できちんと理由も添えて、指定した財産を特定の人が引き継げるように対処しておくことが必要になってきます。

この場合、他の相続人との間で不公平感が出ないよう、親が元気なうちに代償金を用意できるような準備をしておく、など別途対策を考えておくことが必要になってきます。

4.まとめ

以上、遺言を書くメリットは、
①生きている間に、自分の希望するとおりに財産の分け方を決めておける
②法で決められた相続人以外の人にも財産を渡せる
③相続に必要な手続きが少なくて済む
④遺産分割を話し合う必要が無くなる
⑤揉め事を回避できる
でした。

遺言を書く必要のある人は、
Ⅰ人に問題がある
Ⅱ財産に問題がある
人でした。

あなたの親や家族には遺言を用意するメリットはありましたか?もしくは遺言を書く必要性がありそうでしたか?
ただ、必要性があったとしても、親に、いきなり遺言を書いてくれとは言いにくいですよね。
「ウチにはこんな問題が起こりそうだよね。どうしようか考えてるの?」
と、まずは聞いてみましょう。
考えていない、どうしていいかわからない、と言われたら「遺言で対処できるかもしれないよ。」とやんわり伝えてみてくださいね。