遺贈(寄付)の注意点

「遺贈」とは、遺言により、財産を無償で渡すことです。
つまり、死後に行う「贈与」です。

「自分が死んだら、遺産をあげたい(寄付したい)人(会社)がいる。でもその人(会社)は法定相続人ではない。」
という場合には、この「遺贈」という手段で、あげたい人(会社)に自分の財産をあげることができます。

ただし、遺贈をしようと考える場合には、気をつけなければならない点があります。

今回は、遺贈をする場合の注意点について、説明したいと思います。

遺贈する場合には、遺言執行者が必要

まず、遺贈する場合には、遺言執行者(遺言の内容を実現する人)が必要になります。
ですから、遺言書の中で、必ず遺言執行者を指定しておきましょう。

遺言執行者を指定していなかった場合、相続人、遺言者の債権者、受贈者(遺言で遺贈を受けた人)と言った利害関係人が、家庭裁判所に「遺言執行者を決めてください」と申し立てることが必要になります(遺言執行者選任の申立て)。
つまり、速やかに遺言の内容を実現することができません。
また、申立ての費用や手間をかけることになってしまいます。

自筆証書遺言(自分で手書きで作成する遺言書)の場合、遺贈しておきながら、遺言執行者の選任を忘れている遺言書をよく見かけます。
遺言執行者は、受贈者(遺言で財産を貰う人)でもかまいませんので、遺贈する場合には、遺言執行者の指定を、お忘れなく!

特定遺贈と包括遺贈の違い

特定遺贈とは、遺言書の中でどの財産をあげるのかを「特定して」死後に贈与するものです。

具体的には、
「〇〇に、現金100万円を遺贈する」
「次の土地を〇〇会社に遺贈する。 所在:〇〇県〇〇市〇〇丁〇〇番地、地番:〇番〇 地目:宅地 地積〇〇,〇〇㎡」
といったような書き方がされているものが特定遺贈になります。

包括遺贈とは、財産を「割合で」あげることです。

具体的には、
「遺言者の有する全財産を、〇〇に包括して遺贈する」
「遺言者の有する一切の財産の2分の1を、〇〇に遺贈する」
「遺言者の有する全財産を甲乙丙の三人に対して3分の1ずつの割合で包括して遺贈する」
といったような書き方がされているものです。

一見、包括遺贈に見える書き方に、
「遺言者の有する不動産全部を遺贈する」、「遺言者名義の一切の預貯金のうち3分の1を遺贈する」
というものがありますが、このような内容の場合には、包括遺贈ではなく、特定遺贈になります。
なぜなら、相続開始時に遺贈の対象が特定している(他の相続人などと話し合わなくても、自分がもらえるものは「これ」とわかる)からです。

包括遺贈する場合の注意点

さて、遺贈をする場合には、特定遺贈と包括遺贈のどちらの方法でやった方がよいのでしょうか。

あげたい財産は、「この家」とか、「〇〇銀行の預金200万円」などと決まっているなら、もう特定遺贈で決まりですね。

遺言を書いた後に財産の内容が変動する可能性が高く、自分の死後、財産がどれほど残っているかが予想できない場合などには、包括遺贈する方が、遺言を書く側としては書きやすいかと思います。

ただし、包括遺贈する場合には注意点があります。

注意点1:「遺言書があるのに、遺産分割協議をしなければならない」

遺言書を書くメリットの一つは、遺産分割協議をせずに、さっさと相続手続が進められることです。
ところが、包括遺贈をしてしまうと、遺言があるのに遺産分割協議が必要になってしまうのです。

例えば、「全財産を甲乙平に3分の1ずつの割合で包括して遺贈する。」と遺言で書かれており、遺産が不動産、預貯金、株式とあったとします。
このような場合、どのように3分の1ずつ分けるか、甲乙丙の三人で話し合わなければ分けられませんよね。
全部売却して現金化して分けるのか、売らないで共有化にするのか・・・。
結果、遺言があるのに相続手続はスムーズに進まない、ということになります。

 

注意点2:「包括遺贈で財産を受取ると、被相続人の借金返済などの債務も相続人と共に遺贈を受けた割合で承継する」

これは、受贈者(遺贈で財産を受け取った人)が相続人でなかった場合に起こる問題です。
民法では、包括受遺者は「相続人と同一の権利を有する」と規定されているために起こる問題です。
ちなみに「債務」というのは借金だけでなく、未払医療費、入院費なども入ってきます。

具体的に「相続人と同一の権利を有する」とはどういうことになるかを説明します。

① 包括遺贈を受けた受遺者は、相続人の地位の主要部分である財産相続権(プラスの財産、マイナスの財産の両方)を取得する。
つまり、本来の相続人たちから見ると、新たに受遺者という相続人が増えた、ということになります。
遺産分割・相続分の取り戻しについても相続人と同様に扱われるわけです。

② 包括受遺者は、相続人と同様に遺贈を放棄したり、単純承認したり、限定承認したりすることができる。
「できる」とありますが、もし、遺贈の放棄をするのであれば、自分が包括受遺者(包括遺贈で財産をもらえる人)であると知ったときから3か月以内に家庭裁判所に遺贈放棄の申述をしなければ放棄できない、ということなのです。
期限内に遺贈放棄の申述することを忘れれば、単純承認したとみなされますので、万一、遺言者に多額の債務があるとわかったら急いで手続しなければなりませんね。

また、債務の有無に関係なく、そもそも「あげると書いてあったけれど、有難迷惑な財産だったから受取りたくない!」という場合も、やはり3か月以内に家庭裁判所に遺贈放棄の申述をしなければなりません。

一方、特定遺贈の受遺者は、いつでも遺贈を放棄することができます。
また、放棄をするのに、家庭裁判所に放棄の申述をする必要もありません。
「遺贈を放棄します。」と相続人たちに伝えればいいだけです。配達証明付きの内容証明郵便ですれば、より確実でしょう。

注意点3:「遺留分侵害請求の対象となる」

遺贈で財産をもらったはよいものの、相続人の遺留分を侵害していた場合には、遺留分侵害請求されます。
つまり、相続人でないのに、遺産分割の揉め事に巻き込まれる可能性がある、ということですね。

注意点4:「遺贈される財産の中に不動産が含まれているときは、遺贈による登記は、相続人などと共同申請をしなければならない」
つまり、不動産をもらった場合には、他の相続人の協力が得られないと登記ができません。

注意点5:「受贈者が法定相続人でない場合、相続税は2割増し」
相続税の基礎控除(3000万円)を超える評価額の遺産をもらった場合、法定相続人の2割増しの相続税が取られます

法人に遺言で寄付をする場合の注意点

法人に対して、遺言で寄附を行うのも遺贈です。
さて、死後に自分の財産で社会貢献がしたい、特定の会社を応援したい、子どもがいないから自分の起こした会社に遺産を残したい、と言った理由で、遺贈する場合には、上記に挙げたこと以外にも気をつけなければならないことがあります。
安易に遺贈すると、財産をあげた先の法人や、相続人がいる場合には相続人にも迷惑をかけてしまうことがあるのです。

主な問題は「税金」です。
寄附したい相手がユニセフなどの非課税法人であれば、税金の問題は起こりませんが、そうではない会社や法人の場合には、以下の問題が起こることがあります。

① 遺贈する財産が、不動産や株式等、含み益があるものの場合、相続人に譲渡所得税がかかることがある
  単純にお金を寄付するのであれば、含み益はないので譲渡所得税はかかりません。
  そして、譲渡所得税がかかる場合、相続人は、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に準確定申告を行い、所得税を納税する必要があります。
  つまり、相続人がわずかしか遺産をもらえない場合でも、遺贈したために譲渡所得税を負担しなければならなくなってしまう可能性があるのです。

② 法人は法人税を払わなければならなくなる。
  個人に対する遺贈でも、貰う人が相続人でない場合には相続人の2割増しの相続税を払うのでしたよね。
  当然、財産を貰ったのであれば、法人も税金を払わなければなりません。

  このとき払う税金を計算するのに、貰った財産の評価をしますが、この場合の評価額は「時価」です。
  相続人の払う相続税を計算するときは、「相続税評価額」です。
  「時価」と「相続税評価額」は別物です。
  お金であれば、時価と相続税評価額は一致していますが、貰ったものが不動産や株式などの場合には「時価」と「相続税評価額」が一致しないので、税金が高額になる可能性があり、要注意です。

③ 包括遺贈だった場合、遺贈を拒否するには、法人であっても家庭裁判所に3か月以内に放棄の申立てが必要。
「そんな高い法人税を払えない」「その遺産は貰っても扱いに困る」から遺贈を拒否したい、と言う場合、法人であっても、包括遺贈を拒否するには、家庭裁判所に申立てが必要になります。

まとめ

ユニセフなどの積極的に遺贈を受け付けている団体でも、「遺贈を考えている場合には一度相談してください」と案内に書いてあります。

遺贈をするからには、相手に迷惑はかけたくないはずです。
負担なく、喜んで受け取ってほしいですよね。
遺贈を考える場合には、相手が個人であっても、法人であっても、上記にあげた注意点をよく念頭に置いて、検討してください。
できれば相手が欲しいと思うかどうか、聞いてみた方が無難でしょう。
寄付したい先の法人が非課税法人か否かも調べることをお忘れなく。

これでよいのかな?と悩まれた場合には、当事務所でも相談を受け付けておりますので、お気軽にお問合せください。

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