「どうも親が遺言を書いたらしい」
そう聞くと、どのような内容の遺言を書いたのか、子としては気になるところです。
「自分にとって不利な内容だったら困るな」
「最近付き合いだした愛人に遺産を渡すような内容だったら書き直させたいな」
と心配に思うこともありますよね。
では、親がまだ生きている間に、子が親の遺言の内容を確認することはできるのでしょうか?
このような質問もよく受けるので、今回はこの点について説明したいと思います。
公正証書遺言
公正証書遺言を作成すると、原本は公証役場で保管されます。
正本と謄本は、遺言者が持ち帰り、自分で保管します。
遺言者によっては、自分の死後、速やかに遺言の内容を実現してもらえるよう、遺言執行者に保管してもらう人もいます。
公証役場で保管している遺言書の原本ですが、遺言者が生存している間は、将来の相続人などの利害関係人が閲覧したり謄本をもらうことができません。
遺言者が生存している間は、書いた遺言の閲覧や謄本の請求ができるのは、遺言を書いた本人に限られます。
遺言者が認知症になるなどして法定後見人がついたとしても、法定後見人ですら、これらの請求をすることもできない、とされています。
親が実際に遺言書を作成したのかどうかだけを聞きたいと思っても、それについてすら、公証役場は答えてはくれません。
公証役場に保管された遺言は、遺言者が亡くなるまで、厳重に秘密が守られるのです。
しかし、遺言書の正本や謄本を持っている親に、直接「見せてほしい」とお願いして、見せてもらうことは可能です。
「どうしても内容を知りたい」という場合には、親を説得するしかないでしょう。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者本人が遺言本文を自分で書いて作成するものです。
かつては、手書きの遺言は自分で保管するほかありませんでしたが、現在は保管制度があるので、遺言書保管所(法務局の一部)に、自筆証書遺言を預けることができます。
書いた遺言を手元に保管している場合はともかくとして、保管制度を利用した遺言書を子が見ることは可能なのでしょうか?
結論としては、保管制度を利用している自筆証書遺言は、遺言者が生存している間は、公正証書遺言と同じく、他の人が見ることはできません。
遺言者が死亡するまでは、遺言の閲覧請求ができるのは、遺言を書いた本人だけです。
しかも、公正証書遺言と異なり、保管制度を利用した場合は正本や謄本と言った原本の写しは出ません。
親を説得しても、保管申請前に親が遺言書のコピーを取っていない限り、正確な内容を把握することは難しいでしょう。
結論
結局、親が生きている間は、公正証書遺言や、遺言書保管所に預けられた自筆証書遺言を子が見ることは、「不可能」です。
「遺言の内容が心配だ」
と言う場合には、親としっかり話し合って内容を教えてもらうほかない、というわけです。
いずれにしても、親子間に信頼関係がないと難しい、ということですね。