被相続人(亡くなった方)の配偶者には相続税の税額軽減があります。
この制度は、「被相続人(亡くなった人)の配偶者が取得した遺産の額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからない」というものです。
「次の金額」とは、
①1億6000万円
②配偶者の法定相続分相当額
です。
これは大きい税額軽減ですよね。
使えるのであれば是非使いたい軽減です。
そこで今回は軽減を受ける場合の注意点についてお知らせしたいと思います。
事実婚の配偶者には適用なし
さて、この税額軽減を受けられるのは、婚姻届を出している夫婦の配偶者です。
結婚していると言っても、事実婚(内縁関係)の夫婦の配偶者には、この税額軽減の適用はありません。
ちなみに配偶者が相続放棄をした場合であっても、配偶者が遺贈で財産を取得した場合には、この税額軽減の適用はあります。
また、配偶者が制限納税義務者であっても、この適用は受けられます。
制限納税義務者とは、「相続・遺贈が発生した時点から遡って5年以内に国内に住所が無い人」のことを指します。
税額軽減を受けるには相続税の申告が必要
さて、税額軽減を受けるためには、相続税の申告をすることが必要です。
ときおり「税額軽減を使えば、払う相続税は0円になるわ。払う税金がないということは申告もいらないわね。」と勘違いなさる方がいますが、これは違います。
相続税の申告をして「税額軽減を受けたいです。」と言って初めて軽減が受けられるので申告が必要です。
税額軽減は、配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産を基に計算されます。
つまり、相続税の申告期限(被相続人が死亡してから10か月以内)までに分割されていない財産は、税額軽減の対象になりません。
遺言が無く、遺産分割協議の必要があるご家族は、相続税の申告期限までに遺産分割協議を成立させる必要がある、というわけです。
ただし、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付したうえで、申告期限までに分割されなかった財産について申告期限から3年以内に分割したときは、税額軽減の対象になります。
これがどういう事なのか、もう少し説明しますと、被相続人が死亡してから10か月以内に遺産分割協議が成立しなかったときは、未分割の状態(法定相続分)で一旦、相続税の申告をしないといけない、ということです。
この一旦出す申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書を添付する必要がある」ということなのです。
添付し忘れると、後に遺産分割協議が成立した時に、配偶者の税額軽減は受けられませんのでくれぐれも注意してください。
必要書類は?
配偶者の税額軽減を受けるために必要な書類は、相続税の申告書のほか
①戸籍謄本
②配偶者の取得した財産が分かる書類
です。
配偶者の取得した財産が分かる書類とは、
・遺言書
・遺産分割協議書(相続人全員の実印の押印+印鑑登録証明書を添付したもの)
・調停調書又は審判書の謄本
といったものです。
相続税はトータルで考えよう
配偶者の税額軽減を受けると大幅に相続税が削減されますが、二次相続まである場合には、配偶者の税額軽減を最大限使うかどうかは検討の余地があります。
配偶者の片方が死亡した一次相続では配偶者の税額控除が使えますが、もう一方の配偶者も亡くなって子だけが相続人になる二次相続のときには配偶者の税額軽減を受けられる人はいません。
一次相続で配偶者の税額軽減を最大限使い、配偶者に遺産の大部分を相続させたけれども、二次相続のときに残っていた財産が多額で、子が払う相続税の負担が大きくなってしまった。結果として、配偶者の税額軽減を最大限使ったら一次と二次の合計では相続税が高くついてしまった、というのは意外とある話です。
相続税が高額になると予想されるご家族の場合は、一次相続、二次相続の合計の相続税が、遺産の分け方でどう変わるか試算したうえで、一次相続で配偶者に「どれだけ」・「どの」遺産を相続させるか考えることをお勧めします。
相続税の正確な試算は相続に詳しい税理士にしていただきましょう。
以上、今回は相続税の配偶者の税額軽減についてお伝えしました。