「遺産分割」と一口に言いますが、基本的な分割方法は3種類あります。
具体的には、①現物分割、②換価分割、③代償分割、の3つです。
どの方法を優先しなければならない、という決まりはありません。
相続人全員で合意ができれば、どの分け方をしてもOKです。
今回は、そもそも遺産をどのように分ければよいのかわからない、という方のために、それぞれの方法について説明したいと思います。
現物分割
現物分割は、「現物」つまりその物自体を分ける方法です。
例えば、遺産として自宅土地建物、田畑、車、預貯金があり、相続人が3人いたとします。
長男は、自宅土地建物を取得。
二男は、田畑と車を取得。
三男は、預貯金を取得。
遺産の中からそれぞれ欲しいものを選び、「私もそれが欲しい。」と欲しいものがかち合うことさえなければ、3つの遺産分割方法のうち一番楽な方法です。
ただし、見てお分かりのとおり、この分割方法で各相続人が取得した遺産の評価額が平等になることは、まずありません。
しかし、遺産は平等に分けなければいけないわけではありませんし、法定相続分で分けなければいけないわけでもありません。
したがって、各相続人が取得した遺産の評価額が平等でなくても、相続人全員が納得しているのであればどのように分けても何ら問題ありません。
換価分割
換価分割は、不動産や株など、現金でない遺産を売却してお金に換え、売却して得られたお金を分割する方法です。
「相続人全員が平等に遺産をもらえないのは嫌だ!」
「法定相続分で分けるのでなければ納得しない!」
となれば、この「換価分割」という方法を取ることが候補に上がってきます。
不動産は、固定資産評価額、相続税評価額、時価、と、その価値の評価方法がいくつもあります。
株の場合は毎日相場が変動するので、いつの時期で評価するのかで価格が変わってきます。
このように現金以外の遺産は、そのものの価値をどう評価するかが難しい、という問題があります。
相続人の仲が悪いと、どう評価するのか、そもそも評価する方法を巡って争いが起きてしまうことがあります。
となれば、すべて売ってしまえば、そのものの価値がはっきりしますね。
「いくらで売れた」とはっきり結果が出るので、これ以上遺産の評価額で争いようがありません。
お金に変わったので、分けるのも楽になります。
ただし、ここで一つ注意点をお伝えしておきたいと思います。
換価分割にすることを決め、実際に遺産を売却することは共有財産の処分となります。
遺産を売却して得られた利益は譲渡所得税の対象ですので、売れた価格によっては共有者全員に譲渡所得税が課税される可能性があります。
つまり、共有者それぞれに確定申告が必要になりますので、申告手続きを忘れないようにしてくださいね。
代償分割
さて、「みんなで平等に分けたい。」と考えるのはいいとして、「だからといって先祖代々の田畑を全部売ってしまうのは困る。」「私は実家を引き継いで住みたい。」と考える相続人もいますよね。
遺産を売却することに反対する相続人がいるとなると換価分割という分割方法は取れません。
そのようなときに考えるのが「代償分割」です。
遺産の中に現金・預貯金が少なく、不動産などの分けにくい遺産が多い。
そして分けにくい遺産の評価額の方が、現金・預貯金よりも高い。
このような場合、不動産などの現物をもらった相続人が、現金・預貯金を取得する相続人より得してしまいますね。
「それでは不公平じゃないか。納得できない。」
ごもっともです。
そこで、評価額の高い現物を取得した相続人が、その代償として代わりのお金や物などを他の相続人にあげて不公平な部分を調整します。
これが「代償分割」という方法です。
代償としてあげるお金や物は、自分のポケットマネーや自分が受取った保険金、別途自分が持っていた不動産など、代償を受け取る側の相続人が承諾すれば何でもOKです。
ただし、代償としてお金以外のものを交付する場合は、譲渡所得税が課税される可能性が出てきますので、この点もご注意ください。
(詳しくは「代償分割とは?」の記事をご参照ください。)
以上、今回は、遺産分割の3つの方法をお伝えしました。
遺産分割の方法を検討する場合に参考にしていただければ幸いです。