農地の相続

遺産の中に農地があった場合、どのような相続手続が必要になるのでしょうか。
今回は農地の相続について簡単に説明したいと思います。

相続手続の流れは?

遺産の中に農地があっても、全体的な相続手続の流れは、基本的には、ほぼ同じです。

遺産全体の調査・相続人の調査を行い、遺言があれば、遺言に従って遺産を分けます。
遺言が無ければ遺産分割協議を行って遺産を分けます。
遺産の総額が相続税の基礎控除を上回っていれば、死亡後10か月以内に相続税の申告と納税を行います。

もう一つ、被相続人が農地を耕作して収入を得ていた場合には、生前毎年確定申告をしていると思います。
その場合には、被相続人の死後4か月以内に、亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得について、準確定申告を行う必要がありますので忘れないようにしてください。

農地法3条の許可の要・不要

さて、農地の所有権を移転する場合には、農業委員会から許可を得なければなりません。
しかし、相続の場合、誰が農地を相続するかによって許可が必要になるか不要になるかが変わります。
表にまとめましたので、以下をご覧ください。

承継者相続人相続人以外
包括遺贈特定遺贈
農地法3条の許可不要不要必要

法定相続人が相続する場合や、遺言で包括遺贈で農地を遺贈された人は、農地法3条の許可を得る必要はありません。
(包括遺贈とは、遺産の全部又は一部を包括的に遺贈するもので、財産を具体的に特定せず、財産の一定の割合を示して行うものです。)

ただし、許可を得る必要は無いと言っても、農地の権利取得は、農業委員会に農地法3条の3第1項の届出は必要ですので、忘れずに届出をしてくださいね。
この届出は遅滞なく行わなければなりません。
「遅滞なく」とは、相続が開始したことを知った日から10か月以内、つまり相続税の申告・納税と同じです。
遺産分割協議の成立日ではないことにご注意ください。
届出を怠ると10万円以下の過料に処せられます。

届出書の様式や必要な添付書類は市町村により異なりますので、各市町村の窓口等でご確認いただければと思います。
ちなみに農地を引き継いだものの、自ら農業を承継していく意思が無い場合など、他に農地の担い手を必要とする場合には、この届出書の中で農業委員会によるあっせんを希望する旨の意思表示をすることができます。

相続人以外が特定遺贈で農地を取得するとき

相続人以外が特定遺贈で農地をもらった場合、現実に所有権を取得するには農地法3条の許可を得る必要があります。
この許可を得ないと所有権移転登記もできません。

許可をもらうまでの流れはおおよそ以下のようになります。
①申請書の提出

②申請内容の審査

③農業委員会の総会審査

④許可

⑤許可書の交付

許可書をもらえたら、晴れて農地の所有権を取得できます。
許可書を持って所有権の移転登記手続をします。

農地の取得に併せて行う手続は?

農業を営んでいる場合、田植え機やコンバイン等の機械器具なども遺産の中にありますよね。
これらの農業用資産の名義変更、農業協同組合など各種団体への加入名義や保険の名義変更が必要になってきます。

このほか、相続人が行う手続としては、
・認定農業者に関する手続
・農業年金者死亡一時金の受取り
・農業経営基盤強化準備金の引き継ぎ
といったものがあります。

被相続人が認定農業者であったか、農業者年金に加入していたかなど、遺産の調査の時に併せて調べておきましょう。
できれば、農業を引き継ぐ予定の人は、これらの情報も生前に被相続人から聞いておくほうが手続がスムーズに進められるかと思います。

以上、今回は農地の相続について簡単に説明しました。
農地転用などの手続は、またの機会にブログに載せたいと思います。

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