相続人は誰? ― 相続人の特定と順位

相続が開始すると、まずやらなければならないのが相続人の確認・特定です。
相続人全員が参加しない状態でした遺産分割協議は、無効になってしまいますから、相続人の確認・特定は重要です。

さて、法定相続人は誰になるのか。
優先順位はどうなっているのか。
今回は、これらについて説明したいと思います。

配偶者は常に相続人

配偶者は、離婚しない限り、必ず相続人になります。
ここで言う配偶者とは、婚姻届を出して、戸籍に載っている配偶者です。
別居して何年も経っており、どこから誰が見ても婚姻関係が破綻しているようにしか見えなくても、離婚届を出して正式に離婚しない限りは配偶者ですので相続人です。

一方、内縁の夫や妻は、どんなに長く一緒に暮らしていても、どんなに仲睦まじかったとしても相続人になれません。

第一順位は子や孫

相続の第一順位は直系卑属、つまり子や孫です。
直系卑属のうち、亡くなった人に親等がより近い人が相続人になります。
つまり、まずは子が相続人になります。
子が被相続人より先に亡くなっていたら、孫が相続人になります。

ところで、離婚して相手の元配偶者について行ってしまった子も、血のつながりがある以上、相続人です。
別れてから、もう何十年も会っていない。
連絡先はおろか、どこに住んでいるかもわからない状態であっても相続人です。

婚姻関係にない相手(いわゆる愛人)との間に生まれた非嫡出子も「子」ですから第一順位の相続人です。
昔は、非嫡出子の法定相続分は嫡出子(婚姻届を出した配偶者との間に生まれた子)の2分の1でした。
平成25年の最高裁の決定で嫡出子と非嫡出子の相続分が平等でないのは「違憲(憲法違反)だ」とされ、その決定を受けて民法も改正されました。
そのため現在は、嫡出子も非嫡出子も法定相続分は同等です。

第二順位は両親や祖父母

第二順位は、直系尊属、つまり亡くなった人の両親や祖父母に当たる人です。
亡くなった人が結婚しておらず、また付き合っていた人もおらず、子や孫がいなかった。
または、子や孫がいたけれど病気や事故などで既に全員死亡してしまっている、という状態である場合には、第二順位として直系尊属、つまり、両親や祖父母が相続人になります。

子の時と同じく、まず亡くなった人の両親が相続人になります。
両親が被相続人より先に死亡してしまったけれども、祖父母が存命していた場合は、祖父母が相続人になります。

亡くなった人が養子(普通養子)で、相続人がこの第二順位にあたる人たちだったときは、ちょっと気を付けましょう。
この場合、養子の実親と養親の双方が相続人になります。
養子に出て行ったからと言って、実の親との血縁が切れるわけではないので、養子が亡くなったときには実の親も相続人になるのです。
ただし、特別養子だった場合には、実の親は相続人にはなりません

第三順位は兄弟姉妹

第三順位は兄弟姉妹になります。

亡くなった人には、子も孫もいない。
両親や祖父母も既に死亡している。
そうなると、兄弟姉妹が相続人になるのです。
亡くなった兄弟姉妹がいる場合には、その子である甥や姪が相続人になります。

ここで気を付けなければならないのは、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹(いわゆる半血の兄弟姉妹)も相続人となることです。
ただし、半血の兄弟姉妹の法定相続分は、全血の兄弟姉妹の2分の1になります。

代襲相続って?

代襲(だいしゅう)相続、という言葉は聞いたことがありますか?
代襲相続人とはなんでしょうか?

代襲相続とは、被相続人の死亡以前に、その相続人となるはずだった子や兄弟姉妹(「被代襲者」と言います。)が死亡していたり、相続欠格や相続廃除で相続権を失っていた場合に、その子や兄弟姉妹の直系卑属が(この人たちを「代襲者、代襲相続人」と言います。)が、被代襲者の受けるべき相続分を相続することを言います。

つまり、被相続人の第一順位の相続人である子が亡くなっていたときに相続人となる「孫」や、第三順位の相続人である兄弟姉妹が亡くなっていたときに相続人となる「甥・姪」が「代襲相続人」と呼ばれる人たちです。

孫が亡くなっていた場合に、ひ孫がいれば、ひ孫が代襲相続人になります。
代襲相続人を更に代襲するので、ひ孫が代襲相続することを「再代襲」と言います。

ところが、兄弟姉妹が亡くなっていた場合に更に甥・姪も亡くなっていた場合、兄弟姉妹の孫にあたる人たちは代襲相続人になれません。
甥・姪が亡くなっていたときは、そこから先に相続権は移らないのです。

忘れてはいけない養子

相続人の中には養子縁組をした人も含まれます。
養子も「子」なので、第一順位に入ります。
子の中に実子と養子がいる場合、法定相続分はどちらも同じです。

ところで、養子に入って来た人は相続人である、ということはご存知の方が多いのですが、忘れがちなのは、養子として出て行った人です。

特別養子は、実方の血族(血のつながった親や兄弟)との縁が切れてしまうので、実方の血族の相続が発生した場合に相続人となることはありません。
しかしながら、普通養子の場合は、実方の血族に相続が発生した場合には相続人になります
つまり「あの子は養子に出て行ったから関係ない」とは言い切れないのです。
養子に出て行った人がいる場合には、普通養子なのか、特別養子なのか、戸籍を見てきちんと確認する必要があります。

養子の子は?

養子に入って来た人が、被相続人より先に無くなっていた場合、その子は代襲して相続人になれるのでしょうか?

代襲相続人になるか否かは、その養子の子がいつ生まれたかで決まります。

養子縁組に生まれた子は、代襲相続人になれません。
養子縁組に生まれた子だけが、代襲相続人になれます。
つまり、同じ養子の子であっても、養子縁組前に生まれたのか、そうでないのかによって相続人になるのかならないのかが変わってしまいます。
養子が既に死亡しており、その養子に子がいる場合には、戸籍謄本で養子縁組日と誕生日を確認することが重要になります。

胎児は?

子の中には胎児も含まれます(民法886条)。
しかしながらまだ生まれていないので、胎児の代わりに法定代理人として妊娠している母親が遺産分割協議に参加することになります。
しかしながら、ほとんどの場合、母親も同じく相続人となるため、母親が代理すると胎児と母親との間では利益相反してしまいます。
そこで胎児のために特別代理人の選任をすることが必要になります。

ところが、わざわざ特別代理人を立ててまで遺産分割協議をしても、死産だった場合には遺産分割協議のやり直しが必要になってしまうことがあります。
そもそも、妊娠期間は約10か月ですね。
生まれてくるまで遺産分割を保留にしていても、とくには咎められません。

どうしても10か月待てない、という特殊な事情が無い限り、生まれるのを待ってから遺産分割をするのが普通です。

以上、今回は相続人が誰になるのかについて説明しました。
相続人の確定・特定は戸籍を取り寄せて行います。
戸籍をチェックする際には、漏れている人がいないか、上記にあげたポイントに注意しながら相続人を特定してみてくださいね。

関連記事

  1. 相続登記の義務化について

  2. プラスの相続財産から債務控除できるもの

  3. 預貯金の仮払い制度 ― その内容と注意点

  4. 森林の土地を相続した時の届出

  5. 相続財産の特定 — 相続財産になるもの、ならないもの

  6. 戸籍収集のやり方