「相続税を安くできるって聞いたけど、小規模宅地の特例って何?」
話には聞くけれど、どういうものなのかよく分からない、と思われている方も多いと思います。
そこで今回は、小規模宅地の特例について、簡単にわかりやすく説明したいと思います。
小規模宅地の特例とは、個人が、相続又は遺言による贈与(遺贈)により取得した宅地等のうち、亡くなった人(被相続人)等の事業又は住むために使われていた宅地等で、要件に該当すれば限度面積までに限って、その宅地等の評価額を減額する、というものです。
評価額が減額されるので、その土地にかかる相続税を安くできる、という特例なのです。
ここで、亡くなった人「等」となっているのは、亡くなった本人だけでなく、条件によっては亡くなった本人と生計を一緒にしていた親族も含まれることがあるからです。
宅地「等」となっているのは、単に土地そのものだけでなく、土地の上に存在する借地権や定期借地権なども小規模宅地の特例の対象になる、という意味です。
「宅地」となっていることから、お気づきになったと思いますが、田んぼや畑などについては適用されません。
そこで商売をやっていた、または自宅として住んでいた、という土地でないといけません。
また、商売をやっていた、と言っても、単に適当に砂利をしいただけの青空駐車場は対象外になる可能性が高いです。
その土地の上に、建物又は、塀、タンクや煙突といった簡単には動かせない「構築物」と呼ばれる物が建っている土地でないと対象になりません。
ここで一つ、大切なことを先にお伝えします。
この小規模宅地の特例は、自動的には適用されません。
「ウチは小規模宅地の特例の要件に当てはまるね。それで計算すると払う相続税が無い。よかった~。」
と考えて、相続税の申告をしない、というのはダメです。
また単に、相続税の申告をしただけ、というのでもダメです。
ちゃんと「小規模宅地の特例を使います。」と、書類を揃えて、申告期限内に相続税の申告をしないと適用を受けられません。
小規模宅地の特例は4種類
小規模宅地の特例には4種類あります。
具体的には、
①特定事業用宅地等(パン屋、クリーニング屋など、いわゆる個人商店)
②特定同族会社事業用宅地等(簡単に言うと、親族だけで経営しているような会社)
③貸付事業用宅地等(アパート、マンション、駐車場等を経営している大家さん)
④特定居住用宅地等(個人の自宅)
の4つです。
減額を受けられる限度面積と減額割合は次の表のとおりです。
限度面積 | 減額割合 | |
特定事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
特定同族会社事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% |
特定居住用宅地等 | 330㎡ | 80% |
4種類ある、ということがわかったところで、それぞれの特例について、簡単に説明したいと思います。
特定事業用宅地
特定事業用宅地等とは、相続開始の直前において、亡くなった人等の事業(貸付事業にあたるものを除く)のために使われていた宅地等で、要件に該当する親族が、相続又は遺贈で取得したものを指します。
ただし、本人が亡くなる前に3年以内に事業を開始していた場合は、その事業規模が政令で定める規模を超えるものでなかった場合には適用を受けられません。
対象となる土地は、
①亡くなった人の事業のために使っていた宅地等
②亡くなった人と生計を一緒にしていた親族が事業のために使っていた宅地等
です。
具体的には、お店の建物が建っている敷地などですね。
適用要件として、宅地等を取得する親族が、
①その事業を引き継いで、その宅地上で、相続税申告期限まで事業を営み続けていること。
②その宅地等を相続税の申告期限まで保有していたこと
が必要になります。
相続や遺贈で土地を取得した後、相続税の申告期限前に商売を止めて土地を売ってしまったら、小規模宅地の特例は受けられない、というわけです。
特定同族会社事業用宅地等
特定同族会社事業用宅地等とは、相続開始の直前において、一定の法人が事業を行うために使っていた宅地等で、要件に該当する親族が、相続又は遺贈で取得したものを指します。
対象となる土地は、
一定の法人が事業を行うために使っていた宅地等
です。
具体的には、会社の建物が建っている敷地などですね。
ここで、「一定の法人」とは、亡くなった人及び親族が、その法人の発行済み株式総数の50%超を有している法人を指します。
宅地等を取得する親族の要件は、
相続税の申告期限において、その法人の役員となっていること
です。
また、相続税の申告期限まで、宅地等を取得した親族がその宅地等を保有していることも必要になります。
貸付事業用宅地等
貸付事業用宅地等とは、相続開始の直前において、亡くなった人等の不動産貸付事業のために使われていた宅地等で、要件に該当する親族が、相続又は遺贈で取得したものを指します。
対象となる宅地等は、
①亡くなった人の不動産貸付業のために使っていた宅地等
②亡くなった人と生計を一緒にしていた親族が不動産貸付業のために使っていた宅地等
です。
適用要件として、宅地等を取得する親族が、
①その事業を引き継いで、その宅地上で、相続税申告期限まで事業を営み続けていること。
②その宅地等を相続税の申告期限まで保有していたこと
が必要になります。
特定居住用宅地等
特定居住用宅地等とは、相続開始直前に、亡くなった人等が自宅として住んでいた宅地等で、要件に該当する親族が相続又は遺贈で取得したものを指します。
対象となる宅地等は、
①亡くなった人が自宅として住んでいたもの
②亡くなった人と生計を一緒にしていた親族が自宅として住んでいたもの
です。
適用対象になる取得者は、
①亡くなった人が自宅として住んでいたものについては、
ア 亡くなった人の配偶者
イ 亡くなった人と同居していた親族
ウ 家を持っていない親族(ただし他にも細かい要件あり)
です。
②亡くなった人と生計を一緒にしていた親族が自宅として住んでいたものについては、
ア 亡くなった人の配偶者
イ 亡くなった人と生計を一緒にしていた親族
です。
当事務所のブログをお読みになっている方は、4つのうち特定居住用宅地等に該当する可能性の高い方が多いかと思います。
特定居住用宅地等について、もう少し詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照いただければと思います。
以上、今回は、小規模宅地の特例についてざっくりと説明しました。
小規模宅地の特例を受けるには、他にも細かい要件があります。
上記の説明を見て、「ウチは該当しそうだな」と思いましたら、相続に詳しい税理士に、要件にきちんと合致しているかチェックしてもらうことをお勧めします。
もちろん、当事務所に相続手続のことでご相談いただいた場合でも、小規模宅地の特例に合致しそうな場合などには、税理士さんにおつなぎしますのでご安心くださいね。