相続が開始し、調べたら相続人の中に、実は養子がいた、又は養子として親元から出て行った人がいたことがわかりました。
こんな時、
「養子がいると、相続関係がどうなるの?」
と悩まれる方がいらっしゃいます。
そのような方のために、今回は、養子と相続について整理して説明したいと思います。
普通養子と特別養子
まず、養子と一口に言いますが、養子には普通養子と特別養子がいます。
普通養子は、養親となる人・養子となる人の合意及び届出で縁組します。
(ただし、未成年者を養子とする場合には、家庭裁判所の許可が必要です。)
養親の年齢は20歳以上。
養子の年齢は、養親より年少であれば構いません。
養子縁組を解消する際も、当事者間の協議でできます。
養子縁組の前後で、実親との親子関係は変わりません。
特別養子縁組をするには、家庭裁判所の審判で許可を得る必要があります。
養親は父母ともに20歳以上、かつ父母のいずれかが25歳以上である必要があります。
養子となる子は、原則6歳未満です。
離縁の方法も厳格で、家庭裁判所の審判で許可を得る必要があります。
養子縁組をした後は、実親との親子関係は終了します。
戸籍の記載はどうなっている?
では、戸籍の記載はどうなっているのでしょうか。
【普通養子】
普通養子は、養子縁組をすると、実親の戸籍には養子縁組をした旨が記載されます。
養子となった子は、実親の戸籍からは「除籍」となります。
そして、養子となった子は、養親の戸籍に入り、続柄の部分に「養子」と記載されます。
【特別養子】
特別養子は、実親の戸籍から養親の戸籍には直接移動しません。
まず、家庭裁判所の許可を得た後、市区町村に「特別養子縁組届」を提出します。
そうすると、実親の本籍地に養親の姓を称する特別養子の単独戸籍が作られます。
そこから、養親の戸籍に移動します。
戸籍には養子縁組をしたことは記載されません。
続柄も、長男、長女、などと記載され、「養子」と記載されることはありません。
一見して、養子とわからないように記載されるのです。
ただし、身分事項欄に「民法817条の2による裁判確定日」の記載がされます。
これはどういう理由なのかと言うと、特別養子となった人が、ふとしたきっかけで自分が養子であると知り、実の親を知りたい、と考えた時に戸籍をたどることができるように、との配慮のためであるようです。
相続人になる?ならない?
養子が相続人になるかならないかは、普通養子だったのか、特別養子だったのかで変わります。
養親が亡くなった場合は、普通養子であっても特別養子であっても養親の相続人になります。
しかし、実親が亡くなった場合、普通養子は実親の相続人になりますが、特別養子は実親の相続人になりません。
特別養子は、養子縁組をした時点で実の親と親子関係が終了してしまうからです。
以下に表にまとめましたので、ご覧ください。
普通養子 | 特別養子 | |
実親が死亡 | 相続人になる | 相続人とならない |
養親が死亡 | 相続人になる | 相続人になる |
一点注意してほしいのですが、養親より先に普通養子が死亡し、普通養子に子や孫がおらず、親が相続人となる場合、実親とともに養親も相続人となりますので相続人の数を間違えないようにしてくださいね。
養親より先に養子が亡くなった時は?
養親より先に養子が亡くなっていた場合、養子に子や孫がいれば代襲相続が発生します。
つまり養子の子や孫が養親の相続人になります。
しかし、その子や孫が代襲相続人になるか否かは、その養子の子がいつ生まれたかで変わるので注意が必要です。
養子縁組前に生まれた子は、代襲相続人になれません。
養子縁組後に生まれた子だけが、代襲相続人になれます。
つまり、同じ養子の子であっても、養子縁組前に生まれたのか、そうでないのかによって相続人になるのかならないのかが変わってしまいます。
養子が既に死亡しており、その養子に子がいる場合には、戸籍謄本で養子縁組日と誕生日を注意深く確認する必要があるのです。
税法上の養子の扱い
民法上と税法上の養子の扱いには違いがあります。
相続税には基礎控除があります。
基礎控除額は、3000万円+600万円×法定相続人の数です。
民法上は、養子の数に制限はありません。
したがって、何人養子を取っても、養子となった人は法定相続人です。
しかしながら、相続税の基礎控除額を計算するときの法定相続人として数える養子の人数には制限があります。
ただし特別養子の場合には、人数制限はありません。
法定相続人として計算に入れられる養子の数に制限があるのは普通養子の場合です。
亡くなった被相続人の実子がいる場合 → 1人まで
亡くなった被相続人に実子がいない場合 → 2人まで
これはなぜかというと、むやみに養子を増やして相続税を節税しようとする人が出るのを防ぐためです。
特別養子の場合は、養子縁組をするのに家庭裁判所の審判が必要であり、手続が厳格であるため、節税目的で養子を取るということが考えにくいために人数制限はありません。
ちなみに、被相続人に子がおらず、被相続人の兄弟姉妹が相続人となり、その兄弟姉妹の中に養子がいた場合、法定相続人の数に入れる養子の数には制限はありません。
この場合、養子は被相続人の「親」の養子であって、被相続人自身の養子ではないからです。
この辺りも間違いやすいポイントですのでご注意ください。
(相続税の基礎控除額がいくらになるか混乱してしまったときは、迷わずお近くの税理士に確認してくださいね。)
節税目的でされた養子縁組の効力は?
では節税目的でされた養子縁組は否定されてしまうのでしょうか?
節税目的でされた養子縁組の効力に関して、最高裁の判例では、「専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちにその養子縁組ついて無効にはならない」としています(最判H29.1.31)。
このように直ちに無効にはならないようですが、養子の数を法定相続人に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合には、本来基礎控除の計算をするのに含められる養子の数も税務署から否定されることがあるようですので、注意が必要かと思います。
以上、今回は養子と相続について説明しました。
養子が居た場合には民法上と税法上で取扱いが変わる部分がありますし、相続関係が複雑になってきます。
戸籍を確認したけれども、やっぱりよく分からない、と言う場合には、いつでも当事務所やお近くの専門家にご相談くださいね。