「空き家を売却すると3000万円の控除がある」
このような話を耳にしたことがある人は多いかと思います。
そうは言っても、詳しいことまで知っている人は少ないでしょう。
そこで、今回はできるだけわかりやすく、この制度について説明したいと思います。
そもそも対象となる「空き家」は?
「空き家」と一口に言いますが、空き家ならば何でもこの特別控除の対象になるわけではありません。
①対象となる「空き家」は相続や遺贈で取得したもの
まず、この特別控除の対象となる空き家は「相続」または「遺贈」で取得した家屋とその敷地です。
ここで、気をつけなければいけないポイントがあります。
この特別控除を受けるためには「家屋とその敷地の両方を相続する必要がある。」というところです。
遺産分割で、
「自分は、家だけもらった。」
「私は、家が建っている下の土地だけもらった。」
という場合には、どちらの相続人もこの特別控除は使えませんので、注意してください。
②区分所有の物件は対象外!
家屋が区分所有建物である旨の登記がされている二世帯住宅やマンションは、この特別控除の対象外です。
③家屋は昭和56年5月31日より前に建築されたもの
昭和56年5月31日より後に建築した家は、空き家であっても対象になりません。
少なくとも築40年以上経っていないような物件は対象外です。
いつ建てたかわからない場合は、登記簿を確認しましょう。
④相続開始の直前まで、亡くなった人が居住していた家であること
その家には、相続開始の直前まで、被相続人(相続される人)が住んでいたことが条件です。
つまり、被相続人が亡くなってしまったために空き家になったことが条件です。
親が亡くなる何年も前からずっと空き家だった物件は対象外です。
親がずっと自宅に一人で住んでいたけれども、晩年は老人ホームに入ってしまった場合も、一定の要件を満たせばこの特例が使えます。
このような場合については、下記のブログをご参照ください。
↓
親が老人ホームに入った場合
⑤その亡くなった人以外に、その家に住んでいた人がいないこと
対象となる家に、亡くなった人の他にも住んでいる人がいた場合には対象外です。
つまり、高齢の親が一人で暮らしていた家は対象になりますが、同居の子がいた場合などはこの特例の対象になりません。
例えば、親が亡くなったので、同居していた子が小さい家に移ろうと考えて実家を売る、というような場合には、対象にならない、というわけです。
⑥相続開始から売却時まで使っていないこと
この特例の適用を受けたい場合には、売ろうと思っている家屋やその敷地を、相続開始から売却時まで一切使ってはいけません。
売却まで日にちがあるからと、相続開始後に相続人の誰かが一時的に住んだり、そこでちょっとした商売をしたりすると、この適用は受けられないのです。
もちろん、他人に貸すのもダメです。
⑦家屋は耐震基準に適合していること
売却する空き家は、売却時に耐震基準に適合している事が条件になっています。
実家が耐震性に適合していない場合には、売却前に耐震リフォームをしておくことが必須になります。
ちなみに、空き家とその敷地を相続し、空き家は取り壊してしまって残った土地を売る、と言う場合も、この特別控除を使うことができます。
この場合、家は取り壊してしまうので、わざわざ耐震リフォームなどする必要はありません。
売却時の要件は?
この特別控除を受けるには、売却時にも要件があります。
①売却先は第三者
空き家を売る相手は、まるきり赤の他人でないといけません。
自分の配偶者や親族、同族会社などに空き家を売った場合にはこの特別控除は受けられません。
②売却金額は1億円以下
売却代金が1億円を超える場合は、この特別控除は受けられません。
売却期限は3年以内かつ2023年12月31日まで
この特別控除を受けられる売却期限も設けられています。
まず、相続発生日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があります。
また、適用期間は、2023年12月31日までです。
今年は既に2022年なので、これから相続が発生する方は、譲渡までの猶予は3年ないので、ご注意ください。
譲渡所得の計算式は?
さて、3000万円の控除を受けられるのはわかったとして、実際どのように控除されるのでしょうか。
空き家を売却して得た代金に対する所得税は、譲渡所得額に応じて課せられます。
空き家の特別控除の特例を適用した場合の譲渡所得の計算式は下記のとおりです。
譲渡所得 = 譲渡価格 ー 取得費 ー 譲渡費用 ー 空き家の特別控除3000万円
譲渡価格=売却金額のことです。
取得費=そもそもこの家を買ったときの購入代金、購入時の仲介手数料、登録免許税などのことです。
取得費が分からない場合は、譲渡価格の5%を取得費として計算します。
譲渡費用=売却時の仲介手数料、印紙税などです。
必要書類
この特別控除を受けるためには税の申告が必要です。
上記の譲渡所得の計算をして、特別控除3000万円を引くと譲渡所得が0円になる場合も申告が必要です。
税金の申告書に添付する書類は以下のとおりです。
①譲渡所得の内訳書
②被相続人居住用家屋びその敷地等の登記事項証明書
③被相続人居住用家屋及びその敷地の売買契約書の写し
(空き家を取り壊してその敷地を売却した場合は、敷地の売買契約書になります。)
④被相続人居住用家屋等(空き家)の確認書
⑤被相続人居住用家屋の耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し
※被相続人居住用家屋=亡くなった人が住んでいた空き家のこと
④の被相続人居住用家屋等確認書は、空き家がある市町村に申請して交付を受けます。
この確認書の申請については、下記のブログをご覧いただければと思います。
↓
被相続人居住用家屋等確認書の申請について
まとめ
以上、今回は空き家の譲渡所得の特別控除についてご説明しました。
売却は相続開始後3年以内となっていますが、特例の適用期限は2023年12月31日までとされていますので、これからこの特別控除を使いたいなと考えている場合には、売るか売らないか速やかな判断が必要になります。
老人ホームに入っていた場合には別の要件がありますし、被相続人居住用家屋等確認書の申請をするにあたっては別途必要書類がありますので、特別控除を受けたい場合にはこちらもよくご確認くださいね。